研究概要 |
自己愛傾向の高い個人は自分の怒りの正当性を過度に高く評価するため、対人葛藤のエスカレーションが生じやすくなる。本研究ではこの現象を「自己愛性対人葛藤」と呼び、夫婦を対象とした質問紙調査によるペアデータや二時点データを分析することで、自己愛性対人葛藤の抑制要因を解明することを目的としている。24年度に実施した質問紙調査では、1)自己愛傾向が対人葛藤に及ぼす影響と、その抑制要因としてのストレスユーモア対処の効果、2)ペアデータによる自己愛傾向の類似性が対人葛藤に及ぼす影響、の2点について検討することを目的とした。 調査対象は、三重県の市立中学校に通う生徒の両親、約600組1200名であった。質問紙は生徒を通じて手渡された。回答の際には、夫婦別々に回答するよう求め、回答後すぐに個別に封をして回収した。主な質問項目は、自己愛傾向(小塩, 1998)、対人ストレスユーモア対処(桾本・山崎, 2010)、怒り・怒られ経験(阿部・高木, 2005)、怒り表出の正当性評価(阿部・高木, 2007)、夫婦関係満足度(諸井, 1996)である。 この調査で得られたデータを分析することで、25年度に予定している調査に最も適した尺度項目を選定することが可能となる。また、ストレスユーモア対処が自己愛性対人葛藤に及ぼす影響や、当事者間での類似性の影響についても基礎的なデータを得ることができ、仮説の精緻化、再検討も可能となる。データは現在分析中で、25年度中に学会発表を行い、論文投稿する予定である。
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