本研究の骨子は、ピッチやリズムといった音の基本的な特徴によって音列に知覚的体制化が生じる事で、我々の音知覚の神経メカニズムがどのような影響を受けるのかを明らかにすることであった。
本研究期間中には、1)リズムパターンあるいはピッチパターンによる音列の知覚的体制化が生じることで、音の欠落知覚にどのような影響が見られるか、2)音楽経験の有無によって音の欠落知覚における知覚的体制化の影響にどのような違いが見られるか、3)複数の特徴によって知覚的体制化が生じる場合に、音の欠落に対する相互作用が見られるか、に関する研究を脳磁図およびfMRIを用いて実施した。
そして、1)音列中の音の欠落を検出する感度が向上すること、2)これらの知覚的体制化によって、音列中の音の欠落に対する聴覚野の反応が増加すること、3)音楽経験の有無によって左半球の聴覚野および右頭頂葉の反応が異なること、などが示され、知覚的体制化への聴覚野の関与が明らかになっただけでなく、音楽経験によって新たな脳部位の関与が加わることも明らかにした。これらの結果は、知覚的体制化によって次に聞こえるであろう音への期待が高まり、その期待と実際に聞こえる音とのマッチングに聴覚野および右頭頂葉などが関わることを示唆している。これらは2報の論文として刊行した。これらの研究は脳磁図を用いて行ったが、より空間解像度の高いfMRIを用いた実験を最終年度に行った。この実験でもやはり知覚的体制化における聴覚野の関与を示すことができ、現在論文を投稿中である。最終年度は、この実験のほかに複数の学会にて本研究費で得られた成果についてのポスターおよび口頭発表を行った。
|