研究課題
睡眠中に体験する夢にはしばしば情動要素が含まれる。本研究では,夢における情動体験の発生機序と情動体験が生じることの機能的意義(役割)について,脳活動と自律神経活動の両側面から検討を行った。具体的には以下の2点を検討した。①夢見聴取を行うことで夢の情動要素と自律神経活動・脳活動の関連の検討,②情動体験の影響を受けたレム睡眠が起床後の情動体験に対する対処過程に及ぼす影響の検討を行った。その結果,①夢のネガティブ情動要素は自律神経活動 (心拍数) と負の情動を司る扁桃体の活動を反映する脳電位 (PRN) に正の相関関係を,ポジティブ情動要素はPRNと負の相関関係を示すことがそれぞれわかった。さらに,夢の内容は個人の性格特性とは有意な相関関係を示さなかった一方で,寝る前の気分が夢内容と関連を示した。②レム短縮群で排斥に対する社会的痛みが大きくなり,さらにこの痛みはレム睡眠の持続時間が短くなるほど大きくなることが示された。また,起床後の情動体験に関する認知的側面 (脳電位) の検討により,レム短縮群では起床後の排斥経験よりも受容経験に注意 (P3b) が向いていることが示された。以上の結果より,夢の情動要素はレム睡眠中に情動に関与する脳活動および自律神経活動が再活性化することを反映し,さらにこの再活性化が翌朝の情動調整に関与する可能性を示した。本研究により夢の内容が就床前の気分と関連を示したことから,今後はこの点についてさらに検討を加え,悪夢のメカニズムおよび臨床応用への可能性をさらに検討する必要がある。
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こころの科学
巻: 179 ページ: 29-34
Science Advances
巻: 1(3) ページ: e1400177