研究課題/領域番号 |
24730623
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
富松 江梨佳 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 学術研究員 (20584668)
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キーワード | 時間知覚 / 時間拡張錯覚 / 充実時間錯覚 / ダイナミックランダムドット |
研究概要 |
運動する物体が呈示されたとき、静止した物体よりも長く出現していたと知覚される(時間拡張錯覚)。平成25年度は、運動知覚と時間知覚の生じ方について同時に実験を行い、関連性を調べた。時間拡張錯覚が生じる条件について、ダイナミックランダムドットを呈示することによって調べ、静止したランダムドットが呈示された場合と比較した。それぞれが呈示されたときの時間間隔に対して、主観的時間を、調整法によって測定した。用いた時間間隔は、150から900ミリ秒であった。比較刺激として、ランダムドットのフラッシュを2回、継時的に呈示し、それらが作る空虚時間の時間間隔を用いた。実験の結果、ダイナミックランダムドットを用いた場合と静止したランダムドットを用いた場合の両方で、比較刺激よりも長く知覚された。すなわち、充実時間錯覚が起きることが確かめられた。さらに、比較刺激との差分を過大評価量と定義すると、ダイナミックランラムドットを用いたほうが、静止したランダムドットを用いた場合よりも、過大評価量が大きくなることがわかった。すなわち、時間拡張錯覚が生じた。特に、750ミリ秒以上の時間間隔を用いたとき、ダイナミックランダムドットの呈示時間のほうが、過大評価量が大きくなることがわかった。静止したランダムドットを用いたときは、過大評価量は一定であったが、ダイナミックランダムドットを用いたときは、時間間隔の長さに比例して過大評価量が増加した。このように、運動方向や運動速度は不定であるにもかかわらず、運動知覚が生じるような場合においても、充実時間錯覚は生じた。また、静止したランダムドットが呈示される持続時間と、動的なランダムドットが呈示される持続時間は、異なる方法で処理されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、対応する処理レベルや物理特性が異なる刺激によって構成された時間間隔に対する知覚上の長さを調べ、時間知覚の歪みの有無や特性を比較することによって、時間知覚処理の階層性を考察することを目的としている。今年度は、充実時間錯覚および時間拡張錯覚に関して実験を実施し、今後研究を進めるうえで有益な以下の結果を得た。(1)静止したランダムドットまたはダイナミックランダムドットが呈示されているときの持続時間は、空虚時間と比較すると、過大評価されることが確かめられた。(2)運動方向や速度が不定であっても、時間拡張錯覚が生じる。ここまでの結果をまとめて、国際学会で発表する予定である。また、論文を執筆し、国際誌に投稿する準備を行っているところである。これらの実験および成果の発表は、ほぼ当初の計画通りに実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、時間知覚処理の階層性について調べるため、時間拡張錯覚および視聴覚統合について検討していく。得られた結果から、内的時計が処理段階のどこにどのように現れるかを考察する。次年度は、引き続き時間拡張錯覚について調べる予定である。 運動知覚と時間知覚について同時に実験を行い、関連性を調べる。例えば、静止図形を一定の時間呈示して錯覚的に運動印象を生じさせ、一方では、実際の運動をも呈示する。実験によって得られた結果をまとめ、学会での発表および論文執筆・投稿を行う。 具体的な方法として、時間拡張錯覚が起きるとき、運動は知覚される必要があるのかを検討する実験を実施することを予定している。物理的に運動していないが運動を知覚する刺激や、物理的に運動しているが運動を知覚しない刺激を用いて、主観的時間長を測定する。これらを比較して得られた結果から、運動知覚がまずあり、それによって時間知覚が影響されるのか、それとも、運動と物体の呈示時間とは別々に処理されるのかを検討する。例えば、物理的に運動していないが運動を知覚する刺激において、時間拡張錯覚が起き、物理的に運動しているが運動を知覚しない刺激においては錯覚が起きないとき、運動を知覚すること自体が時間知覚に影響していることを意味する。すなわち、この結果は、知覚システムが運動を処理した後、その影響を受けて時間を処理していることを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、年度途中より研究を中断することになったため、前年度時点での使用計画と大きな誤差が生じた。また、有機ELディスプレイを新たに購入予定であったが、すでに所属研究室に配備されているディスプレイを引き続き使用できたため、購入することを見送った。この他、当初計画していた国内および海外出張を取りやめたため残額が生じた。 補助期間の延長を申請したため、次年度以降の研究費として使用する予定である。具体的には、新型のディスプレイなど、実験の実施に必要な機器および周辺機器の購入に使用する。また、実験補助者や実験参加者への謝金、および、出張のための旅費として使用する予定である。
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