研究課題/領域番号 |
24730626
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
神保 太樹 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (60601317)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 匂い / 嗅覚機能生理 / 脳血流量変化 / fMRI / fNIRS |
研究概要 |
交付決定額の関係上、研究に使用する装置について自己開発を行うこととし本年においては主たる装置の開発を中心的な研究内容とした。装置の制御系としてStandard MIDI Fileが簡便であったため採用した。装置は形状上、1)コンプレッサー部(エアー放出部)、2)エアー分岐部、3)匂い物質チャンバー部、4)エアー制御弁部、5)エアー合流部、6)酸素マスク装着部、の6部位を作成した。また制御系が正常に作動しているかを検討する為のLEDライト部も設けた。3)部位における匂い物質チャンバーは6チャンネルとし、内1チャンネルを匂いのフラッシングに用いることとした。尚、装置の基盤等については既存部品をなるべく使用することとした。また制御ソフトウェアは今のところ信号の手動制御による制御を採用した簡便なものを用いているが、来年度以降に制御系の見直しを行う。 作成した装置について予備調査を行い本装置が本課題の実施に問題なく使用できるかどうかを検討した。(同時に脳表層部に対する匂いの効果を検討した。)使用機材としてfMRIの検討前に、使用が比較的容易で時間的制約を受けづらいfNIRS(機能的光トポグラフィー)装置を採用し、データを収集した。データ収集のプロトコルとしては、fMRI実験と同様にブロックデザインを採用し、匂い吸入直後から30秒の間の脳活動の変化について検討した。結果として、5種の香料についてそれぞれが脳活動に有意に影響を及ぼした。部位としては特に前頭眼窩野がその特徴的な部位であることを示した。 これらの研究結果に伴う次年度の課題としてチャンバーに匂いが付着する可能性と、エアー流路におけるテフロンチューブの長さによって、匂いが嗅覚受容器に到達するまでに若干のタイムラグが生じること等が判明した。次年度はこれらの問題点の解決をすると共に、fMRIにおける脳深部の脳活動変化を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書においては装置の作成と人における脳活動のデータ収集の2点についてを目的とした。装置の作成について、当初難航していたが装置作成における条件としてfNIRSを採用することで、簡便に作業ができるようになり、一応使用できるレベルまで組み上がっていることからある程度順調に到達目標に達していると考えられる。 人における脳活動のデータ収集に関しては、当初fNIRSの採用は検討していなかったが、装置作成と平行して実験を行ったために、初年度はfNIRSを用いた脳表層活動の調査を中心とした。 結果としてfMRIに関しては予備データの準備のみで取得ができていないことから、この点についてははやや遅れていると言えるが、代替案としてfNIRSを用いた実験系の構築と実施を行っており、成果として幾つかの香料について特徴的な脳変化を観察できたことから、総合的には概ね順調に進展しているものと考えられた。 尚、これらの研究に関係して一部を日本解剖学会等で発表を行ったが、論文等の執筆については次年度以降を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の方針として、第一に装置の使用感の向上が挙げられる。本年度においては安価なパーツを多数使用したこともあり、構造上の細かな点(エアー流入路の接続の甘さなどの構造上の問題や前述した匂いがチャンバーにうつることなど)の問題点なども挙げられた。従ってこれらの構造上の問題点と、制御系におけるソフトウェアの問題点を改良することによって研究について使いやすい装置とすることを目標としている。 第二に人における匂いによる脳活動変化の検討としては、次年度以降にはfMRIを用いた比較実験及び観察研究を行う予定であり、概ね研究計画に沿った進展が期待できると考えられる。 また、今年度にfNIRSを採用したので、このデータとの相関性があるのかどうかと、申請者の過去の研究成果である嗅覚障害と諸処の疾患の関連を踏まえた測定法として確立できるかをあわせて検討する予定である。 最終的には申請書中にある、専門家として匂いに携わる調香士、香道師範、アロマセラピストなどの脳内において、日常的に意識して匂いに触れるわけではない一般人とどのような違いがあるのかを詳細に検討することを目的としている。この実施の為に特に来年度は被験者ごとの脳の表層部および深部の特徴性が評価できるかどうかを中心に検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、装置使用環境の整備、装置自体の整備、fMRI、fNIRS画像を解析するためのワークステーションの導入などに主に利用する予定である。場合によってはこれら装置の運用費が必要となる可能性がある。(現在は、雑費のみ負担しているが、来年度以降には運用費の負担が必要になる可能性がある。) また、実験協力者に対する謝礼等についても使用する予定がある。(その額については検討中である。) その他、作業の進捗に従って研究協力者等に対する謝金が発生する可能性がある。 以上に加えて、国際学会及び国内学会での発表に際する旅費・交通費がある程度必要と考えられる。また旅費として国内の研究協力者との打ち合わせ経費などが必要となる見込みである。
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