研究課題/領域番号 |
24730627
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
澤 幸祐 専修大学, 人間科学部, 准教授 (60407682)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 因果推論 / 時間学習 / 古典的条件づけ / 連合学習 |
研究概要 |
本年度は,Blaisdell et al. (2006)において用いられた因果推論課題において,訓練フェーズにおける刺激間の時間関係を操作することが因果推論の成績に与える影響について検討した。当初の研究実施計画どおりに,Event 1とEvent 2,およびEvent 1とEvent 3が継時提示される群と,同時提示される群の2群構成で実験を行った。原因と結果が存在するという因果関係の成立のためには,事象間には時間的な前後関係が存在している必要があり,継時提示群においては因果関係に基づいた推論が,同時提示群においては因果関係ではなく単なる共変関係に基づいた推論が行われると予測された。 実験の結果,Event 1およびEvent 2に用いられる刺激の種類によって傾向に違いが確認された。この点についてはさらなる検討が必要であると思われるが,先行研究と同一の刺激の組み合わせを用いた個体の結果においては,当初の予測を支持する傾向が確認された。この結果は,ラットが事象間の時間関係を符号化しつつ,事象間に因果関係が存在するかどうかの推論に時間情報を利用している可能性を示唆する。 連合学習理論において,事象間に形成される連合が時間情報を含んでいる可能性についてはこれまでにも多くの知見が得られているが,ラットが因果推論を行う上でこうした時間情報を用いていることを示したのは今回の結果が初めてである。また,訓練フェーズにおいて獲得された時間情報に基づいた時間地図を,因果推論のテスト試行において柔軟に利用していることを示したことも今回の結果の重要な点であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究においては,当初の計画に記載した平成24年度に実施予定の実験を実施することができた。この点において,本研究は順調に進展していると考えられる。その一方で,研究実績の概要でも述べたとおり,用いる刺激の種類が結果に対して予想外の影響を与えていることが明らかになった。この点においては,次年度以降検討する必要がある。当初の研究計画に基づいて平成25年度の研究を実施する一方で,新たに検討しなければならない問題が明らかになったことは,科学の営みとして当然のことではあるものの,当初計画の進捗に影響する可能性があることから,上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり,今後は因果推論課題におけるテスト試行において,ラットのレバー押しに随伴する刺激の呈示タイミングを操作する実験に着手する。合わせて,現在明らかになっている刺激モダリティによる推論成績への影響について,これまでに得た実験データのより詳細な分析と,用いる刺激を追加するなどの実験を行うことで検討を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究を進めていくため,実験に利用する動物の購入や維持のための飼料等の購入を予定している。また,当初計画では2年に分けて購入する予定であったリトラクタブルレバーを価格の関連から本年度に一括購入することができたので,実験実施用スキナー箱に呈示できる刺激数を増やすためにあらたにスピーカなどの購入を予定している。これは,本年度の研究によって明らかになった刺激モダリティの影響を検討するために必要な機材である。これらの研究成果を発表するために,学会出張なども行う予定である。
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