研究課題/領域番号 |
24730628
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
伊藤 岳人 玉川大学, 脳科学研究所, グローバルCOE研究員 (70553238)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 認知神経科学 / 視線計測 / 情動 / 選好判断 / 意識・無意識 |
研究概要 |
本研究ではfMRIを用いて選好判断過程における脳活動の変化を調べることで、強制的な視線の偏向(視線操作法)が選好意思決定の情報処理プロセスに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。当該年度はfMRI実験により視線操作法を用いた選好課題を行う群(A群)と、視線操作法を用いない課題を行う群(B群)の脳活動を撮像し、視線操作法が選好意思決定の神経ネットワークへ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 当該年度はまず、A群とB群の心理実験の結果を比較検討することで、強制的な視線操作法が被験者の選好判断を一定の割合で操作できることが確認できた。具体的には、被験者を上記の通りに強制的な視線操作を用いる群と、用いない群とに分け、それぞれで選好意思決定課題を行わせた。その結果、A群はB群に対して2倍程度の割合で選好の変化を生じることが確認できた。 次に、A群のMRIデータの解析を行い、選好の変化が起こった場合と起こらなかった場合にわけ、強制的な視線操作法が選好意思決定の神経基盤へ及ぼす影響を検討した。その結果、変化が起こらなかった場合では、眼窩前頭皮質や海馬の賦活に大きな変化は見られなかったが、変化が起こった場合にはこれら両部位の賦活が顕著に上昇していることが確認できた。また同時に、尾状核の活動を時系列で解析検討することにより、視線操作法が選好判断の変化を起こし得るか否かを予測できることも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通りに、当該年度は心理実験、fMRI実験共に順調に遂行できており、それに伴い結果も得られている。ただ、事前に予測できたことではあるが、B群についてはfMRIデータの加算回数が少なく統計解析に耐えうるだけの結果を得ることはできなかった。しかし、A群のfMRIデータの結果は視線操作法が選好意思決定の神経ネットワークへ及ぼす影響を検討するに十分であり、論文として投稿するのに十分であると考えられる。そのため、当該年度は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は視線操作法の累積的な影響を明らかにするために、操作法における顔の呈示回数を変えた実験課題を行い、呈示回数の違いにより影響をうける脳部位を特定することで、視線操作法の累積的影響が選好意思決定の神経基盤へ及ぼす影響を解明することを目的とする。実験手法は前年度と同様であるが、視線操作法に異なる方法を用いる。視線操作法における累積的な影響を見るために、呈示回数が2回、6回、12回それぞれの操作法をもちいた課題を行う。それぞれの提示回数を用いる群において、被験者20名を目途にfMRI実験の撮像を行う。各群のfMRIデータの比較検討を行うことで、選好判断過程における視線操作法の累積的な影響を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の「現在までの達成度」に記した通り、平成24年度の研究は順調に進展した。本年度は当初の予定通りに、視線操作法の累積的影響の検討を行う。研究費は主にMRI実験に使用し、被験者への謝金の他、MRIデータの解析用パソコンの購入、解析用ソフト・統計解析用ソフトの購入にあてるものとする。ただ、昨年度末は学会等の出張が多く、十分に実験が行えずにその分の繰越金が発生してしまったが実験課題はすでに完成しているため、前年度と同様の方法、手続きをもって研究を推進する予定である。また、最終年度であるため、これまでの成果を論文に纏め発表するとともに、国内海外の学会で成果報告を行う。
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