本研究はfMRIを用いて選好判断過程における脳活動の変化を調べることで、強制的な視線の偏向(視線操作法)が選好意思決定の 情報処理プロセスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。当該年度はfMRI実験により視線操作法を用いた選好課題を行う 群(A群)と、視線操作法を用いない課題を行う群(B群)の脳活動を撮像し、視線操作法が選好意思決定の神経ネットワークへ及ぼす 影響を明らかにすることを目的とした。 平成24年度は、A群とB群の心理実験の結果を比較検討することで、強制的な視線操作法が被験者の選好判断を一定の割合で操作できることが確認できた。具体的には、被験者を上記の通りに強制的な視線操作を用いる群と用いない群とに分け、各群で選好意思決定課題を行わせた。その結果、A群はB群に対して2倍程度の割合で選好の変化を生じることが確認できた。 A群のfMRI実験の結果、変化が起こらなかった場合では、眼窩前頭皮質や海馬の賦活に大きな変化は見られな かったが、変化が起こった場合にはこれら両部位の賦活が顕著に上昇していることが確認できた。また、尾状核の活動を時系列で解析検討することにより、視線操作法が選好判断の変化を起こし得るか否かを予測できることも確認できた。 平成25年度は、昨年度と同様に詳細なfMRIデータの解析を進めた。。その結果、選好の変化が起こらなかった場合には、一度目の選好判断の際に眼窩前頭皮質と海馬の賦活に有意な相関が見られた。一方で、変化が起こった場合には、一度目の選好判断時に両部位の賦活に有意な相関は見られなかったが、二度目の判断時には有意に相関が見られた。尾状核の無意識下の判断と、皮質レベルでの意識的な判断が一致した場合には選好の変化は起こらず、一致しなかった場合には起こることを明らかにすることができた。
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