研究課題/領域番号 |
24730633
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
木村 貴彦 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (80379221)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 注意 / 3次元空間 / 空間表象 |
研究概要 |
本研究の目的は,実際空間内での注意メカニズムにおける空間表象の役割を明らかにし,より効率的な注意資源の配分について実験心理学的手法を用いて検討することである.ディスプレイを用いた従来研究とは異なり,実際空間では空間内に物体(刺激)が常に存在している.このように注意を向ける対象が常に存在する環境で効率的に注意を向けるためには空間表象の効果的な利用が不可欠である.本年度は,①比較的大規模な実際空間と,②比較的小規模な実際空間という2種類の実際空間で,注意配分における空間表象の役割を検討することとした.①については,従来から研究代表者が用いてきた実験装置を利用した.刺激の調整など装置の改修を施し,刺激強度を統一するために単純反応時間が計測され,できるだけ統制された実験環境を構築した.主課題と同時に異なる空間位置に提示されるフランカーによる反応時間への干渉程度を注意の配分とする課題を行った.反応時間において,フランカー刺激の提示位置による有意な差は見られず,主課題を行う際にフランカー刺激を無視できることを示している.また,奥行き方向において全ての刺激が観察者の視線上に提示されていたにも関わらず反応遅延がなかったことより,2次元平面上と3次元空間内での空間的注意の配分様式の違いが示唆された.②については具体的な実験実施に向けて,新たな実験装置を構築し,実験計画決定のための基本的な事項について検討した.すなわち,刺激の種類とその提示方法について吟味し,これまでの関連研究を含めて妥当性が検討された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は研究の初年度であり,研究を進めるにあたって最も重要となる,より確実な成果を得るための基盤を整えることに焦点があてられた.その点では刺激特性や実験計画についての検討を行い,新たな実験環境の構築を実施するなど研究を順調に進展させることができたと言える.本研究では,実際空間における空間的注意の配分についての検討を行うことから,研究計画書の内容からさらに踏み込んだ観点として,比較的大規模な空間と比較的小規模な空間という二種類の規模の空間で実験を行うこととし,大規模空間での実験が実施された.このことは,本研究の目的である,三次元空間での注意配分時に用いられる空間表象がどのような特性を有しており,人間の認知処理との関係を明らかにしていく上でも興味深い問題である.今年度の研究によって,研究全体における方向性が明確となり,大規模空間での実験が実施されデータが収集されたことから,おおむね順調に進展しているものと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降,三次元空間での注意配分時に用いられる空間表象がどのような特性を有しており,我々の認知処理にどのような寄与があるのか明らかにしていく.①の比較的大規模の空間では,より現実場面に即した実験環境での知見を獲得するための検討を行うこととする.すなわち,空間内の物体が網膜上で固定された状態とならない観察者動態事態での空間的注意の配分を検討する.②の比較的小規模の空間では,新たに構築された実験環境でデータ収集を行うこととする.その際,予備的な検討を実施し,より確かな知見を得られるよう留意することとする.いずれの研究においても,国内外での学会発表を積極的に実施するなどし,外部からの示唆や助言を得るとともに,必要となる専門的知識の提供を受けるなど効率的に研究を実施していくこととする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究では,より発展的に3次元空間における注意配分と空間表象の関係を検討していくこととなる.研究費の使用計画は主に次の3点である.すなわち,第1に,実験実施にあたっての装置・刺激の拡充や調整,実験参加者に対する謝礼などがあげられる.これらは研究の根幹となる経費である.第2に,国内外での学会・研究会での発表による成果公表を促進していく.これらについての大会参加費や旅費として研究費が充てられることとなる.第3に,学術論文として成果を公表していくための費用として研究費を用いることとする.例えば,英文学術雑誌の場合には英文校正の作業が必須であり,成果を受理されるよう力を入れる.また,研究によって得られた知見をサポートしていくために書籍や文献を参照できるよう関連書籍などを収集していくこととする. これらによって,最終年度に向けての知見の取りまとめと研究成果の現実的場面への展開・貢献を目指していくこととする.
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