実際には提示されていない関連ルアー項目の虚記憶を誘発するDRM課題を用いた実験室研究の成果より、虚記憶の生起が複雑な活性化やモニタリングのプロセスからなることが明らかにされ、理論的説明がなされてきた。今後の課題は、それらのプロセスがどのように自伝的な虚記憶と関連するのかを解明することであろう。本研究は、実験室の虚記憶と現実世界で生起する空想的自伝的虚記憶との関連性を明らかにするために、双方の虚記憶に関与する活性化、および、モニタリングに係る個人変数を個別に検討し、DRM課題からもたらされた理論の一般化可能性を探求する。 平成24年度は、まず、一般大学生においてDES-Cの日本語版の信頼性と有用性を確認し、包括的心霊信奉・心霊体験尺度の準備を行った。平成25年度は、まず、創造活動への没入尺度、空想傾向尺度、日常的離人・解離・分割投影尺度、アレキシサイミア傾向尺度を一般大学生で実施し、DES-Cの特徴を明らかにした。また、包括的心霊信奉・心霊体験尺度を実施した。そして、これまでの結果や今後の実験について、ベルギー・リエージュ大学の研究者から、符号化や情報処理スタイルが虚記憶に関与する可能性について、有意義な助言を得た。平成26年度は、まず、虚記憶と関連すると仮定されるDES-C、日本語版オックスフォード統合失調型パーソナリティ尺度、健常者用幻聴用体験尺度短縮版、認知欲求尺度、リアリティ・モニタリング・エラー経験質問紙、情報処理スタイル尺度などとともに包括的心霊信奉・心霊体験尺度を実施し、その関連性を検討しながら、シングルリストを用いたDRM課題による集団実験を実施した。平成27年度はシングルリストのデータを追加しつつ、研究結果を分析し、複雑なデータについての解釈について、主に国内の研究者間で情報交換しながら、研究を行った。
|