研究課題/領域番号 |
24730640
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
松田 いづみ 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (80356162)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 隠蔽意図 / 再認 / 事象関連電位 / 自律神経系反応 / 隠匿情報検査 |
研究概要 |
目的 隠している情報が提示されたとき,人はどのような生理反応を示すかを調べる。本年度は,隠匿情報検査の手続きを用いて,隠す意図のない刺激に対する生理反応と,隠す意図のある刺激に対する生理反応を比較した。 方法 実験の参加者は34名であった。各参加者は,貴金属と電化製品を1つずつ模擬的に盗んだ。その2つの窃盗品のうち,どちらか一方は実験者に見つかってしまった。その後参加者は,(1) まだ隠している窃盗品に関する検査,(2) すでに発覚している窃盗品に関する検査の2つの隠匿情報検査を受けた。それぞれの隠匿情報検査では,各窃盗品の名前と,その窃盗品と同じカテゴリーに属するが盗まれていない品物の名前4つが,ランダムに提示された。検査中は事象関連脳電位と自律神経系反応を測定した。 結果 窃盗品を隠していてもいなくても,窃盗品を提示したときには,500 ms以内に脳活動(N2・P3)が生じるとともに,心拍数・皮膚電気活動・皮膚血流量といった自律神経系反応が生じた。しかし,窃盗品を隠しているときにのみ,提示後500 ms以降に生じる脳活動(late positive potential)と呼吸反応が生じた。前者の指標群は刺激の再認に関わり,後者の指標群は隠蔽の意図に関わっていることが示唆された。 成果 隠している情報に対しては,刺激の再認とは別の処理過程が生じ,それがPositive slow waveと呼吸に反映されることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は,得られた成果をまとめ,論文として投稿した。2月に国際誌Psychophysiology (IF = 3.29)に受理された。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに,隠蔽に関わる脳活動(late positive potential)が特定された。しかし,この脳活動が具体的にどのような処理を反映するのかまでは分からない。そこで,本年度は,隠蔽に関わるlate positive potentialが反映する処理を明らかにするための実験を行う。先行研究から,late positive potentialは一般に,情動刺激に対する注意の増大,もしくは,深い認知処理を反映すると考えられている。どちらの処理が隠蔽に関わるlate positive potentialと対応するかを調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験時に使う消耗品や,刺激作成に必要なソフトウェアなどを購入する。また,学会で成果発表するための旅費や,英語論文の校閲費にも使用する。
|