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2012 年度 実施状況報告書

抗認知症薬併用療法の行動学的基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730642
研究種目

若手研究(B)

研究機関地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)

研究代表者

柳井 修一  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60469070)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードCilostazol / Phosphodiesterase (PDE) / 記憶・学習 / 認知症 / アルツハイマー病
研究概要

本研究はCilostazol(プレタール)とDonepezil(アリセプト)の併用がマウスの記憶・学習課題の遂行に及ぼす効果を検討することにより、ヒト高齢者における抗認知症薬併用療法の基礎を確立することを目的とする。本研究で使用予定のマウス4系統のうち、本年度はC57BL/6Jマウス、SAMマウス、3xTgマウスについて薬物非投与下での行動評価を行った。行動評価には、24時間活動量や高架式十字迷路、オープンフィールドなどの一般行動解析、また物体探索課題やモリス水迷路課題、恐怖条件づけ課題などの学習課題を組み合わせた行動テストバッテリーを構築した。
C57BL/6Jマウスでは3、12、20ヶ月齢における各種行動解析が終了し、学習機能と活動性は年齢依存的に低下すること、また不安様行動は年齢依存的に増加することを明らかにした。SAMマウスでは、SAM-P8(老化促進)マウスは4ヶ月齢で学習障害を呈することを明らかにした。また、SAMマウスではほとんど報告がされていない恐怖条件づけ課題について詳細な条件検討を行い、恐怖条件づけ学習が成立するプロトコルを見いだした。3xTgマウスでは3ヶ月齢で行動テストバッテリーを構築し、オープンフィールド及び物体探索課題では無動反応が多いこと、またモリス水迷路や恐怖条件付け等の嫌悪性学習課題では安定した遂行が得られることを明らかにした。
本年度の成果はmiddle ageのマウスを加えた3群以上の月齢のマウスを用いることの重要性、また行動評価を行う課題及びそのプロトコルをマウスの系統ごとに選定することの重要性を示唆しており、老化モデルマウスの一般行動及び記憶、学習機能に関する貴重な基礎データである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で用いる被験体4系統のうち、平成24年度はC57BL/6Jマウス(3、12、20ヶ月齢)、SAMマウス(4、8ヶ月齢)、3xTgマウス(3ヶ月齢)の3系統について薬物非投与下での行動評価を行った。その結果、C57BL/6J及びSAMマウスにおいて老化に伴う記憶・学習障害が認められる月齢が明らかになった。次年度以降、本成果を基礎データとして薬物投与下での行動評価を行う。交付申請書に記載した24年度の研究計画のうち、tg2576マウス及び12ヶ月齢の3xTgマウスの行動評価は次年度へ持ち越すこととした。これら2系統の遺伝子改変マウスについては遺伝子型の判定プロトコルを既に確立しており、現在交配、繁殖を行っているところである。また、平成25年度以降に老化モデル動物として用いるC57BL/6J及びSAMマウスは既に購入、飼育を開始している。
以上の進捗状況から、当初の交付申請書作成時の計画より若干の遅れがあるものの、概ね予定通りの進行であると判断する。

今後の研究の推進方策

3xTg及びtg2576の2系統のマウスは交配、繁殖のため平成24年度中に十分な数の被験体を得ることができなかった。そのため、平成25年度の優先事項として薬物非投与下におけるこれら2系統の遺伝子改変マウスの基礎データを収集し、老化に伴う記憶・学習障害が認められる月齢を明らかにする。
本研究で用いるCilostazolの生体内薬物動態を明らかにする。平成24年度中に薬物非投与下での基礎データ収集が完了したC57BL/6J及びSAMマウスに対してCilostazolを投与、一定時間経過後に採血を行い、HPLC法により血中Cilostazol濃度の測定を行う。その後、老化に伴う記憶・学習障害が認められた月齢のC57BL/6J(20ヶ月齢)及びSAMマウス(8ヶ月齢)に対し、Cilostazol投与下における行動評価を行う。投与方法は、経口ゾンデ(急性投与)もしくは混餌(慢性投与)とする。
次年度以降検討予定のAβ及びタウ蛋白の定量、また記憶、学習の神経学的基盤であるneurogenesisの定量に関し、これらの指標を評価可能なプロトコルを確立する。また、次年度以降、老化モデル動物として用いるC57BL/6J及びSAMマウスを購入、飼育を開始するとともに、遺伝子改変マウスの交配、繁殖を行う。

次年度の研究費の使用計画

マウスの生存曲線(月齢ごとの生存率)を考慮した上で統計学的に充分な老齢マウスを用いることができるよう、C57BL/6Jマウス及びSAMマウスを購入する。マウス購入費以外の消耗品費として、遺伝子改変マウスのDNA抽出や遺伝子型判定に用いる試薬、また染色に用いる各種抗体等の研究用試薬を購入する。
また、本研究から得られた成果を発表、知見を社会に還元するため、学会参加費、旅費、英文校閲費、論文印刷費に研究費を充当する。
なお平成24年度分の残額は、25年度の研究費とあわせて消耗品費の購入等に充当する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 長期食餌制限とサクセスフル・エイジング-ラットにおける認知機能の改善-2012

    • 著者名/発表者名
      柳井修一
    • 雑誌名

      行動科学

      巻: 50 ページ: 177-186

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Remarkable Changes in Behavior and Physiology of Laboratory Mice after the Massive 2011 Tohoku Earthquake in Japan2012

    • 著者名/発表者名
      Shuichi Yanai, Yuki Semba, & Shogo Endo
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 7 ページ: e44475

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0044475

    • 査読あり
  • [学会発表] 4ヶ月齢SAM-P8マウスにおける記憶・学習障害

    • 著者名/発表者名
      柳井修一・遠藤昌吾
    • 学会等名
      日本基礎老化学会第35回大会
    • 発表場所
      東邦大学習志野キャンパス
  • [学会発表] ヒトPTSDモデルとしての震災経験マウス

    • 著者名/発表者名
      柳井修一
    • 学会等名
      日本心理学会第76回大会
    • 発表場所
      専修大学生田キャンパス
  • [学会発表] Beahvioral changes of laboratory mice hit by 2011 Tohoku earthquake

    • 著者名/発表者名
      柳井修一・仙葉悠紀・遠藤昌吾
    • 学会等名
      第35回神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
  • [学会発表] Effect of NMDA receptor blockade on acquisition of memory for duration in rats.

    • 著者名/発表者名
      Toshimichi Hata, Seiya Ishino, Shuichi Yanai, & Hiroshige Okaichi
    • 学会等名
      Neuroscience 2012
    • 発表場所
      New Orleans Convention Center
  • [図書] トランスジェニック・ノックアウトマウスの行動解析2012

    • 著者名/発表者名
      J. Crawley(著) 高瀬堅吉・柳井修一(訳・監訳)
    • 総ページ数
      407
    • 出版者
      西村書店

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公開日: 2014-07-24  

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