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2014 年度 実施状況報告書

抗認知症薬併用療法の行動学的基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 24730642
研究機関地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)

研究代表者

柳井 修一  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60469070)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード記憶 / 学習 / Cilostazol / Phosphodiesterase (PDE)
研究実績の概要

本研究はcilostazol(プレタール)とdonepezil(アリセプト)の併用がマウスの記憶・学習課題の遂行に及ぼす効果を検討することで、ヒト高齢者における抗認知症薬併用療法の基礎を確立することを目的とする。平成26年度は、少数の老齢C57BL/6Jマウスを用いてcilostazolとdonepezilの併用に関する予備的検討を行った。Cilostazolは飼料に混ぜること(混餌)で与え、飼料中のcilostazol濃度は0もしくは0.3%とした。また、donepezilは飲水投与とし、濃度は0もしくは0.3%とした。いずれの薬剤も、0.3%濃度の単独投与では顕著な記憶改善効果を持たない。両薬剤を1ヶ月間投与した後に物体探索課題、水迷路課題を行ったところ、0.3% cilostazol + 0.3% donepezil投与群の成績は0% cilostazol + 0% donepezil投与群(統制群)と比較して優れていることが判明した。
また、平成25年度までに得られた老化促進マウス(SAM)の結果について、再現性の確認を行った。その結果、1.5%cilostazol投与老化促進マウスの記憶機能は通常老化マウスと同程度まで改善されており、過年度に行った実験結果に再現性があることを確認した。
本年度の成果は、現在抗血小板薬として臨床で用いられているcilostazolを認知症治療薬として用いることができる可能性を示唆している。抗認知症薬併用は個々の薬物の用量を減らして副作用を軽減できる可能性があり、臨床的にきわめて重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究で用いる4系統の被験体のうち、平成26年度までにC57BL/6Jマウスにおけるcilostazolとdonepezilの併用効果についての予備的検討を終えた。本実験に用いる老齢C57BL/6Jマウスの作出も順調に進んでおり、平成27年度には各条件に十分な被験体数を割り振り、cilostazolとdonepezilの併用効果を詳細に検討できる見込みである。SAMマウスでは、平成25年度までに行った実験の再現性を平成26年度に確認した。
アルツハイマー病モデルマウスである3ヶ月齢の3xTgマウスでは、課題遂行中に多く認められる無動反応が記憶・学習課題の遂行に影響を及ぼす可能性が考えられた。そのため平成26年度には体外受精で胚を作成し、戻し交配を行った。当初の予定以上に期間を要したが、平成27年1月に親の世代の作出に成功した。現在、交付申請書に記載した実験を遂行するために十分な被験体数を確保できるよう交配を行っているところである。
妊娠しない、もしくは出生直後に仔が死亡するなどの理由で自然交配による繁殖が困難なTg2576についても、平成26年度に体外受精を試みた。しかしながら、体外受精で得られた胚の数が極端に少なく、胚移植を行うために十分な胚の数を確保することができなかった。体外受精及びその後の作出期間を考慮すると、Tg2576に関しては交付申請書に記載した実験を平成27年度内に完了することは困難である。2系統の遺伝子改変マウスに関して当初の交付申請書作成時の計画から遅れがあるため、やや遅れていると判断する。

今後の研究の推進方策

C57BL/6Jマウスでは、平成26年度までにcilostazolとdonepezilの併用効果についての予備的検討を終えた。平成27年度には現在作出中の老齢C57BL/6Jマウスを用い、各条件に十分な被験体数を割り振った上でcilostazolとdonepezilの併用効果を詳細に検討する。その際、老齢期に多く認められるうつ病への影響を検討するため、強制水泳課題を行動テストバッテリーに追加する。
SAMマウスでは、cilostazol単独投与の効果の信頼性を高めるため、追加実験を平成26年度に行った。平成27年度には、cilostazolを3ヶ月間投与したSAMマウスの脳サンプルを用い、リン酸化CREBやcfosなどの抗体を用いた免疫染色および定量化を行う。また平成26年度までの研究から、SAMマウスは薬物に対する個体差が非常に大きいことが判明し、SAMマウスにおいて抗認知症薬併用効果を検討することは実験計画上困難であると考えられた。そのため、SAMマウスではcilostazol単剤投与による記憶改善効果の神経基盤をより詳細に検討することとし、cilostazolが脳内グルコース取り込みに及ぼす効果を平成27年度内に明らかにする。
3xTgは、体外受精による戻し交配に成功し、その後の交配も順調に進んでいる。3xTgが3ヶ月齢及び12ヶ月齢に達した時点で、薬物非投与下における行動学的基礎データを収集する。また、平成26年度に行った体外受精で十分な胚の数を得ることができなかったTg2576は、培地や条件を検討した後、再度体外受精による個体作出を試みる。更なる体外受精及びその後の作出期間を考慮すると、交付申請書に記載した実験を平成27年度内に完了することは困難である。そのため、Tg2576は胚移植を行うため十分な胚の数を平成27年度中に得ることを目的とする。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度の研究費は概ね計画通りに執行したものの、研究用試薬等、消耗品の購入がやや少なく、若干の残額が発生した。平成26年度研究費の残額は、27年度の研究費とあわせて消耗品費の購入等に充当する。

次年度使用額の使用計画

平成26年度までに得られた行動学的結果を補うことを目的として、C57BL/6Jマウス及びSAMマウスを購入する。マウス購入費以外の消耗品費として、遺伝子改変マウスのDNA抽出や遺伝子型判定に用いる試薬、染色に用いる各種抗体等の研究用試薬、cilostazolを含有するマウス用飼料を購入する。
また、本研究から得られた成果を発表、知見を社会に還元するため、学会参加費、旅費、英文校閲費、論文印刷費に研究費を充当する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Dynamic characteristics of otolith ocular response during counter rotation about dual yaw axes in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Shimizu N, Wood S, Kushiro K, Yanai S, Perachio A, Makishima T
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 285 ページ: 204-214

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2014.11.022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 巨大地震が飼育動物へ及ぼす影響―東日本大震災が引き起こしたマウスの行動変化―2015

    • 著者名/発表者名
      柳井修一・遠藤昌吾
    • 雑誌名

      LABIO21

      巻: 59 ページ: 20-24

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The effect of diazepam on mouse PTSD-like behaviors induced by the 2011 Tohoku earthquake2014

    • 著者名/発表者名
      Yanai S, Semba Y, & Endo S
    • 雑誌名

      Behavioral Science Research

      巻: 53 ページ: 27-36

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Evaluation of a short reverberant sound field using syllable intelligibility and listening difficulty under multitalker babble2014

    • 著者名/発表者名
      Matsui T, Yanai S, Shimokura R, & Hosoi H
    • 雑誌名

      Acoustical Science and Technology

      巻: 35 ページ: 279-281

    • DOI

      10.1250/ast.35.279

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ドラッグ・リポジショニングによる認知症治療薬のスクリーニング2014

    • 著者名/発表者名
      柳井修一
    • 雑誌名

      基礎老化研究

      巻: 38 ページ: 31-34

    • 査読あり
  • [学会発表] Maintenance of memory functions by chronic administration of cilostazol, a phosphodiesterase 3 inhibitor, in aged mice models2014

    • 著者名/発表者名
      Shuichi Yanai, Kai Kojima, Tomoko Arasaki & Shogo Endo
    • 学会等名
      Neuroscience 2014
    • 発表場所
      Walter E. Washington Convention Center
    • 年月日
      2014-11-15 – 2014-11-19
  • [学会発表] PDE3阻害剤シロスタゾールによる老化促進モデルマウスの記憶障害改善効果2014

    • 著者名/発表者名
      柳井修一・小島開・新崎智子・遠藤昌吾
    • 学会等名
      第37回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] ドラッグ・リポジショニングを用いた認知症治療薬の創製(シンポジウム)人間の生涯発達の理解を目指す生理心理学研究2014

    • 著者名/発表者名
      柳井修一
    • 学会等名
      日本心理学会第78回大会
    • 発表場所
      同志社大学今出川キャンパス
    • 年月日
      2014-09-10 – 2014-09-12
  • [学会発表] SAMP8マウスにおけるホスホジエステラーゼ阻害剤cilostazolの恐怖記憶改善効果2014

    • 著者名/発表者名
      柳井修一・小島開・新崎智子・遠藤昌吾
    • 学会等名
      第37回日本基礎老化学会大会
    • 発表場所
      あいち健康プラザ
    • 年月日
      2014-06-26 – 2014-06-27

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公開日: 2016-06-01  

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