研究課題/領域番号 |
24730643
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
宮崎 佳代子 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 研究員 (80426577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | セロトニン / 光刺激 / 遅延報酬 / 遅延罰 |
研究概要 |
神経伝達物質の一つであるセロトニンは、多くの報告から衝動性を生み出す神経基盤の中で重要な役割を担うことが示唆されているが、一方でその機能的役割について統一的な見解は現在までのところ得られていない。本研究ではセロトニンニューロン選択的チャネルロドプシン2発現マウスを用い、報酬獲得および罰回避行動課題遂行中のセロトニンニューロン活動を光刺激により人為的に操作するというオプトジェネティクスの技術を利用し、セロトニンの行動制御における機能的役割について検証する。24年度に実施した本研究の一部について現在論文を投稿中である。その主な結果を以下に示す。 ・青色光刺激によりセロトニンニューロン活動が活性化されていることを前頭前野からの細胞外濃度測定により確認した。 ・青色光刺激付報酬遅延課題で遅延の増加に伴うエラーが青色光刺激により減少した。 ・音遅延待機行動開始前に青色光刺激をしても行動に影響しなかった。 本研究の意義、重要性として次のことを示したい。これまでのところ一過的にセロトニンニューロン活動を活性化させ行動への影響を示した例は報告されていない。我々は光刺激によるセロトニンニューロン活動の活性化により、報酬のための待機行動が延長されることを示すことに成功した。更に本研究計画に沿って実験を進め、罰回避のための行動抑制、レバー押し行動、それらについても光刺激がどのような影響を及ぼすかを調べることで、行動制御におけるセロトニンの明確な役割、ひいては衝動性を生み出す神経基盤にどのように関与するのか、より具体的な提案が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画として「1, 実験環境の最適化およびマウスの行動トレーニング」「2, 光刺激によるニューロン活動制御を実証する」という2点を予定していた。24年度中にこれらを順調に完了した。更に25年度以降の計画として予定していた「本実験」中の「報酬ノーズポーク課題」に関しては既に実験を完了し、論文にまとめたものを現在投稿中である。これらの理由から、当初の計画よりも進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成25年度以降も当初の計画内容に沿って推進していく予定である。本研究は、報酬待機・罰回避、双方における行動制御へのセロトニンの関わりを調べることを目的としている。次年度使用額が生じた状況を以下に示す。平成24年度に実際に実験を行った結果、その後の実験実施順を変更させる必要が認められた。研究計画立案時には、報酬待機ノーズポーク課題の後罰回避ノーズポーク課題を行い、その後報酬レバー押し課題、罰回避レバー押し課題の順で実験を行うことを計画していた。しかしそれぞれの実験において限られた設備の中で実験環境を最適化させるにあたり、ノーズポーク、レバー押し、と行動で分けるよりも、報酬、罰のグループで分類し、実験の順番を決めた方が効率的であると判断した。平成25年以降、まず報酬獲得課題を中心に研究を進め、その後に罰回避課題に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には報酬ノーズポーク課題環境の最適化及び予備実験、本実験を遂行し、結果を学会で報告する予算として当該年度支出額を使用した。25年度には前年度に行った実験を更に発展させると同時に、新たに報酬レバー押し課題を導入する。報酬ノーズポーク課題と報酬レバー押し課題、2つの実験を並行して行い、報酬獲得課題遂行中のマウスの背側縫線核に光刺激を行い、報酬を獲得するために「待機する」、「より動く」それぞれの行動にどのような影響生じるか、詳細に調べる予定である。そのため25年度の予算は主にレバー押し課題用の実験環境の構築、光刺激に必要な光ファイバー等消耗品の購入、および結果報告のために使用する予定である。
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