本研究の目的は、体育科における「教師のプロ意識」を調査し、卓越した実践者たちの有したプロ意識は伝達可能なのかを学校現場の授業を対象に検討することにあった。具体的には、教師のプロ意識を「自己概念」「専門技能」「他者認知」(トンプソン,1971)それぞれの要素より測定・評価する方法の作成を目指していた。ところが、研究を推進していくプロセスの中で「他者認知」と「専門技能」とが必ずしも一致しないことが明らかになってきた。これより、教師のプロ意識を測定することの意義は低いものと考えられた。そこで今回、斎藤喜博などの体育分野で卓越した教師と言われる方々のプロ意識を導出すること、導出したプロ意識を実際の体育授業場面で表現するためにはどうすればいいのかを優れた教師(態度得点の高い教師)を対象に、実証的に検証すること、導出したプロ意識の伝達可能性を文献学的に検討することの3点を研究課題として取り組んだ。 その結果、優れた教師に共通した意識として、子どもを探る「子ども理解」に関わったプロ意識の高いことを導出した。また、こうしたプロ意識を学ぶステップとして、まずは「見ること」、次に「観ること」が重要になってくることが明らかになってきた。 現在、小学校教育現場では「運動を知らない教師」がほとんどであると言われている。こうした現状は、子どもたちの真正な願い(上手くなりたい)を沈殿化させてしまうものであり、「子ども理解」とは程遠い教師行動である。そこで、教師としてキャリア発達し優れた教師へと成長していくためには、まずは子どもを見て、見えていなかったものが見えるようになることが重要になってくることが、本研究より明らかになってきた。その上で、観ることが出来るようになることであった。 以上の研究実績を挙げることができた。なお、これらの研究実績は、著書2冊にまとめさせて頂いた。
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