研究課題/領域番号 |
24730646
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研究機関 | 聖和学園短期大学 |
研究代表者 |
飯島 典子 聖和学園短期大学, その他部局等, 准教授 (40581351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 幼児教育 / 遊び / 保育園 / 保育計画 |
研究概要 |
<研究I>保育園における幼児教育の実践 平成24年度は次年度の遊びを通じた年間指導計画を立案するための予備調査として、3歳児、4・5歳児、5歳児クラスにおける文字や数の要素を入れた遊びの展開と記録を行った。遊びは指導計画(日案)の作成、実践、カンファレンスを通じて検討が重ねられ、保育園において幼児教育を実施する際の課題と改善点が明らかとなった。 1)5歳児クラスにおいて経験する事項では小学校におけるどのような力を長期的目標として想定しているのかを明確にする必要があり、そのために小学校の学習指導等について保育者と共通理解を図る。2) 中心活動の遊びが保育園での生活とともに連続的に発展させる必要があり、そのために学びの月間指導計画を作成する。3)保育園は異年齢クラスや統合保育といった特色があるため個々の発達とクラス集団全体の発達を踏まえ遊びのねらいには複数の水準を設定する必要があり、それを子どもが達成するように工夫を加える。この結果は日本乳幼児教育学会第23回大会で発表を予定している。 <研究II>学習準備に対する保育者と保護者の認識 平成24年度は、小学校への学習準備に関する保護者と保育者の認識を明らかにするための質問項目を選定するために予備調査を行った。A・B園の3歳児、4歳児、5歳児クラスの保護者(のべ183世帯)に質問紙調査を行った。その結果、小学校への学習準備としてどの程度必要と思うかといった質問では、保護者、保育者の認識はともに文字の読み、計算といった教科学習に関わることの得点が高かった。また、これらの教科学習に関わる得点は、学習意欲に関わる興味関心や学校生活を安定させる時間概念の理解における得点よりも高いことから、保護者と保育者はともに幼児期の教育を教科学習の観点から捉える傾向にあると推察された。この結果は日本発達心理学会第24回大会にて発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.保育計画の調査 対象園が公立保育所となり手続きに時間を要したため平成24年11月より調査を開始した。3歳児、4歳児、5歳児クラス各1クラスにおいて2ヶ月に1回協同遊びの録画調査を行った。協同遊びの実施にあたっては「中・長期的目標と短期的目標」を立て、「現在の子どもの状態」に応じて遊び内容を構成した。遊びの録画記録をもとに保育カンファレンスを行ってきた。ここから、目標設定の修正や指導計画立案時の問題点を整理し、平成25年度調査を実施するための「遊びの年間指導計画」を立案した。同時に保育全体の「ねらい」と関連付け文字や数を取り入れた指導計画を立てるための指導計画フォーマットを作成した。また、遊びや保育の実施にあたっては国際学会(ISSBD)に参加し情報を収集し、その内容を参考とした。 2.子どもの協同遊びへの取り組みについての調査 各クラスの子どものうち変化を詳細に検討するターゲット児を担任との間で選定した。平成24年度の調査開始時期が遅れたため平成24年度と平成25年度の継続記録からその変化を検討することとした。平成25年度調査の中盤から行動分析カテゴリーを決定し分析を行う予定である。 3.保護者の幼児教育の認識についての調査 のべ183世帯の保護者を対象に①幼児教育についての認識、②保護者からみた子どもの文字や数への興味・関心の程度、③家庭での幼児教育の取り組みについて予備調査を行った。また、①幼児教育についての認識は調査園の保育者にも同じ質問紙調査を行ったところ、保育者よりも保護者の得点の方が高い結果となった。また、保育者であっても興味関心や時計によって行動する生活の得点よりも文字や数の習得に関する得点の方が高かった。質問項目が「必要かどうか」という問いだったことからこのような結果になったとも考えられるため、質問項目および評価方法を再検討する必要があると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
1.保育計画の調査 平成24年度に立案した年間指導計画に基づき、4歳児クラス、5歳児クラスの担任に日案とその評価の記入を求める。また、継続してカンファレンスを行い遊びの実施に対する担任の評価を得る。これにより幼児期の発達特徴にあった遊びの設定や進め方について考察していく。また、年間指導計画で示した「ねらい」と予想される発達に応じた目標の設定および遊びの内容を整理し、遊びを通じた幼児教育のカリキュラムの試案へと繋げていく。 2.子どもの協同遊びへの取り組みについての調査 平成24年度から引き続き記録対象となったターゲット児の録画記録と行動分析を行う。ルール(文字・数)の理解、活動への積極的参加などに関するカテゴリーを考案し、時期による子どもの変化を捉える。 3.5歳児の保育場面における就学準備状態の調査と保護者と保育者の幼児教育についての意識調査 5歳児クラスの幼児の就学準備状態を把握することを目的に、就学前に必要なスキルがどの程度身についているのか質問紙によって担任と保護者から評価を得る。具体的には「文字や数の理解の状態」「新しいことを学ぶ意欲」「場面に応じた行動・情動コントロール」「集中」といった項目で質問紙を作成する。また、保護者と保育者の幼児教育に関する意識調査では、平成24年度における幼児教育の認識に関する予備調査で用いられた「必要と思うかどうか」という問いを修正し、幼児期に特に重視したい教育の特徴について調査を行う。これにより、より具体的な保護者と保育者の幼児教育の認識について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費・消耗品費・人件費・謝金 カテゴリー作成やカリキュラムの精度を比較検討するための文献、および行動分析に必要となるDVDポータブルレコーダー、DVDディスクなどを購入するための費用が必要となる。また、同時に実施される対象クラスの遊びの録画記録、秒単位で行う行動分析には学生スタッフに依頼するため謝金が必要となる。さらに、実践された遊びの中から事例集を作成し関連機関に配布するための印刷費用が必要となる。 2.旅費・その他 日本乳幼児教育学会第23回大会、日本発達心理学会大25回大会において研究成果を発表するとともに、情報交換を行うために旅費が必要となる。
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