本研究は、集団思考の質的な深化を図る授業過程の構築のために、理論的基盤を踏まえながら、具体的な授業実践にもとづく研究を通して、集団的な思考の展開過程やその成立・深化を促す学習基盤、指導方法等を明らかにしようとするものである。平成26年度は以下の点を中心に研究を行なった。 1)実施した授業観察・記録に関する資料整理・授業記録の作成を引き続き進め、それに基づく考察を行なった。集団思考の過程とその要件に関わる検討については、話し合いを中心とした小学校の授業の授業記録及びノート等をもとに、子どもの思考の展開あるいは停滞等に着目して検討するとともに、それに関わる授業者の課題提示の方法や段階、考える足場となる教材の提示等の指導方法に関わる課題が着眼された。 2)集団思考の成立を支える学習基盤の形成という観点について、平成25年度に継続的に行なった授業観察・記録等に基づいて検討を進めた。発達段階を考慮した考えを聞き合う学習基盤づくりの指導、授業前の段階での子どもの考えの把握とそれを生かした授業展開、掲示物やワークシート等を活用した学習の流れや振り返りを促す指導方法など、これまでの学習との、あるいは他の子どもの考えとの関連づけを図り学習を深化させるための授業者の働きかけが考察された。 3)集団思考の典型的場面として、子どもが問題を見つけそれを追究する過程に注目して具体的な授業の分析(小学校・国語の授業)を行ない、研究成果としてまとめた。話し合いの過程で、問題が成立・展開されていく節目(問題となる事態の共有、新たな視点に基づく問題の展開、問題の展開を契機とした考えのとらえ直し等)を整理するとともに、その過程で子どもの理解がどのように深まったか、授業者の役割を含めどのようなことがその展開を促したか等について考察した。
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