昨年度までの実験により、障害者用駐車スペース内や建物内に、啓発看板や啓発ポスターを設置した場合、不正利用を抑制する効果は多少あるものの、大幅な抑制にはつながりにくいことが確認された。その要因として、看板やポスターの存在に気づかないドライバーがいることがあると推察された。この実験に引き続き、障害者用駐車スペース内で啓発放送を流すなどの方法の効果を検証することを予定していた。しかし、先の結果を受けて、放送を流す効果は低い可能性が高いと判断された。 そこで本年度は、啓発教育の効果の検証に切り替え、そのための資料を収集すること、啓発教育の試行とその効果検証を行うことを企画した。 まず、茨城県つくば市、愛知県名古屋市において、車いす使用者らを対象に、市民への啓発内容に関するニーズについて、ヒアリング調査を実施した。また、フィールド調査により、各地域の駐車場内に設置された、障害者用駐車スペースに関する啓発看板や啓発ポスターの内容を調べた。さらに、障害者用駐車スペースに関する適切な知識を身につけることを目的とした啓発教育の案を作成し、大学生を対象に試行した。この効果は、啓発の事前、事後に行った質問紙調査によって確認した。 その結果、障害者用駐車スペースに関する啓発は、現状ではドライバーあるいは運転教育受講者に対して行われている。しかし、車いす使用者らが、そうした対象者に直接啓発を行う機会はほとんどないとのことであった。大学生を対象とした啓発教育の効果については、教育の実施後に「健常者は何があっても障害者用駐車スペースに停めてはいけない」と考える者が増えた。また、対象者の全員が、障害者用駐車スペースに停めてはいけないという意識が「非常に」高まったと回答した。ある者は、「停めてはいけないと習ったことはあったが、幅を必要とする人がここにしか停められないという現状は知らなかった」と述べた。
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