本研究は、多文化社会ドイツにおいて排除と共生の葛藤の狭間に見られる差別や偏見、レイシズムへの対抗手段としての青少年教育活動について、その内実を明らかにすることを目的としている。 2012年度から本年度までの現地調査を総括するにあたり、とりわけ、ドイツにおける異文化間教育論の第一人者であるニーケ(Nieke)とレイシズム研究の第一人者である(Leiprecht)による論点に注目し、かれらの論点を整理しながら、本研究対象による教育活動を位置づけるためのマトリックスを試案した。 そして、本研究対象による教育活動を具体的に整理するため、2012年度、2013年度に行った実地調査を踏まえ、本年度は補足資料の収集、研究対象による現在進行中のプロジェクトに関する情報収集を目的に、9月に現地調査を実施した。9月の現地調査では、「レイシズムのない学校」連邦コーディネーター事務所、アンネ・フランク・センター、及び類似の活動をベルリンで展開している社団法人「顔を見せよう!」を訪問し、排除と共生の葛藤に取り組む教育活動についての資料提供を受けた。特に、「レイシズムのない学校」連邦コーディネーター事務所、社団法人「顔を見せよう!」はイスラム系青少年に関わる取り組みを行っており、注目に値するものであった。学校での受け入れやイスラム理解に関する教材等の作成、イスラム系青少年のアイデンティティについてワークショップの開発について情報を得た。また、アンネ・フランク・センターでは、ヨーロッパ14カ国の多様な背景を持った青少年を対象に、新たなプロジェクトを実施しており、これに関わる青少年会議、専門家会議について資料を得た。 なお、理論研究に基づくマトリックスの試案については、異文化間教育学会(於同志社女子大学)において発表した。また、3年間にわたる本研究の成果を成果報告書として作成し、関連する研究者に配布した。
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