平成26年度は、「学習のための評価」と「学習の評価」の関係性についての基礎的な研究を行い、「学習のための評価」にもとづく教育評価システムを構築する際の課題と展望を考察した。 スタンダードにもとづく教育改革が進められる中で、共通の尺度や基準にもとづき教育の成果を評価することが求められるようになってきている。この「学習の評価」の強調は、ハイステイクスなテストを生み出しており、テストのための学習を広めるなど、今日、それがもたらす弊害が様々な形で指摘されるようになってきている。 本研究では、こうした「学習の評価」がもたらす弊害が、教育評価の本質的な性質なのかを考察するために、教育評価の機能概念についてのイギリスを中心とする欧米での議論を検討した。具体的には、ブルームによって提唱された形成的評価と総括的評価という教育評価の機能概念が、「学習のための評価」と「学習の評価」という新しい捉え方の中で、どのように再考されてきているのかを検討した。 研究を進める中で2つのことが明らかとなった。1つめは、形成的評価と総括的評価の概念そのものが、「学習のための評価」と「学習の評価」の提起によって再構築されつつあること。具体的には、両者を分ける基準は、ブルームが提唱した「目的」であり、「時期」や「一般化」の程度によって区別されないことが明らかとなった。2つめは、両者の関係についてである。両者の関係は、その目的の違い故に、必ずしも親和的な関係にならない。ハイステイクスなテストの弊害に示されるように、「学習の評価」(総括的評価)は、「学習のための評価」(形成的評価)の実現を阻む可能性があることが分かってきた。そして、スコットランドでは「学習のための評価」を土台とし、それを「学習の評価」へといかす方策が検討され、実施に移されていることが明らかとなった。
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