本研究の目的は、日本語リテラシー教育に注目して、体系的な大学(学士課程)カリキュラムの構築に向けた示唆を得ることである。 近年、叫ばれている学士課程カリキュラムの体系化とは、アドミッション・カリキュラム・ディプロマという3つのポリシーの策定や、大学の教育目的の学則化などから鑑みるに、育成すべき学士像を志向するカリキュラムであるといえる。そして、この課題の検討に当たって日本語リテラシーに注目する意義は、日本語リテラシーが学部横断的なアカデミズムの汎用的能力である一方、その名を冠した授業科目の設定のみをもって日本語リテラシー教育の実践とされる例が散見されることである。 以上の課題意識を踏まえ、各大学の状況について調査を試みたところ、評価指標を明らかにした上で日本語リテラシーに関する到達目標を大学の教育目標として明確に位置付けている例は管見の限り見られなかった。その原因は以下の2つであると考えられる。すなわち、そもそも育成すべき学士像が明確でないため「学士」に必要な日本語リテラシーの水準を確定できないこと、そして、学士像が明確であってもそこに日本語リテラシーが適切に位置付けられていないこと、である。 体系的学士課程カリキュラムの前提として、教養教育・一般教育の達成度を明確にする必要がある。そして、日本語リテラシー教育はその一環であることから、教養教育・一般教育カリキュラムにおける日本語リテラシー教育の位置付けの確定が急務である。
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