研究課題/領域番号 |
24730660
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
上間 陽子 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90381194)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 貧困 / 沖縄 / リスク層 / 性風俗産業 / 子ども |
研究概要 |
本調査は、沖縄のリスク層の若者の社会関係資本、仕事や生活についてのライフヒストリー研究を目的としたものである。大量統計調査では捕捉することが困難である、リスク層の若者のみを対象としている。 当初15名程度の若者へ聞き取りを依頼していたが、ラポールの形成がとりわけ重要であるということもあり、10人に絞り込んで調査を行なうことになった。 こうした絞り込みは、対象となる若者の多くが性風俗産業で働いているということもあって見失いやすいためこまめな連絡とニーズへの応答(受験勉強の必要性)が必要とされることや、具体的なリスクにもさらされており医療と連携した支援が必要とされることもあったことから、数を集めることよりも、初年度はともかく信頼関係をつくりながら実施することを重視している。複数の対象者には、二ヶ月に一度の聞き取りを行うとともに支援も行いながら、今年度の聞き取りにも繋げている。 現段階であきらかになった点として、沖縄の地元ネットワークの包摂・排除機能の実態、ジェンダー的格差、とりわけ女性が性暴力にさらされているという事実である。沖縄社会の貧困の生きられ方の実態としてこうした聞き取りデータを蓄積出来た点が成果のひとつであるといえるだろう。 ところで聞き取りを行なっている若者には若年出産者も多く、現在子どもを育てているものも多い。そうしたことから、当初は予定になかったのだが、調査対象の「街」のベットタウンの小学校においても調査を昨年12月以降、実施することになった。リスクを抱える子どもたちがどのように過ごしているのかというデータを収集することができ、かつどのような実践手立てがとられるのか現場の教師と連携しながら実践構想を練っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、調査依頼が難しいと思われたが、沖縄で暴走族の研究を行なっている打越正行氏の協力も得ることで、対象が一定程度集まったため調査が可能になっている。 現在、キャバクラ経営者、彫師、建築業(いずれも男性)、非正規職の女性、キャバクラで働く女性、風俗産業で働く女性(いずれも女性)への聞き取りを継続して続けており、数ヶ月単位で変わる彼ら・彼女らへの状況変化の折にも連絡をもらえ、聞き取りを実施することができている。 これらに加えて、上記の対象者たちの働く「街」のベットタウンにて、小学校調査を開始することができた。これによって、リスク層の保護者を持つ子どもたちがどのような困難を抱えているのか、そして打破するためには何を考えていかないといけないのかなどについて考察を深めることができた。この調査においては教師とのラポール形成も重要と思われるが、週1回のフィールド調査と、そのデータの検討会を行うことで、率直に意見交換し、またリスク層の子どもへの支援についても模索している。 以上のような理由で、調査の達成度は(2)の「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、(A)リスク層の若者に聞き取りを進行する。またひきつづき(B)学校調査も実施する。 (A)に関しては、トランスクリプションの受け渡しと、半年に一回程度の聞き取りと支援の必要な場面での支援を実施する。 (B)に関しては、週1の学校調査を、新学期である4月から5月と、二学期開始の9月から10月、学級の終わる2月から3月という時期には集中的に行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
(A):2013年4月からすでに第二次アタック開始している。それをもとにして2013年7月から2ヶ月の集中的な調査を行う。順次トランスクリプションを作成して、対象者と確認。原稿を7月に刊行予定。 (B)昨年までのデータは、2013年秋刊行の紀要に投稿済。それらをもとにして現場と検討。
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