研究課題/領域番号 |
24730666
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
柴山 英樹 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (60439007)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シュタイナー教育 / 言語教育 / 教育思想史 |
研究概要 |
本年度は、同時代のマウトナーの言語批判論を参照枠とし、「シュタイナーにおける言語の芸術性に関する考察」と「シュタイナーにおける『身体の教育』と『言語の教育』の関連性に関する考察」を行った(「シュタイナーにおける言語の芸術性と世界の認識―身体と言語の新たな布置をめぐって―」森田伸子編『言語と教育をめぐる思想史』勁草書房、2013)。 また本年度は、研究実施計画に基づき、ドイツの自由ヴァルドルフ学校における文学教育のカリキュラムについても検討を行った。まず、基礎資料としてヒルデブランドがまとめたカリキュラムを手がかりとしつつ、自由ヴァルドルフ学校の教員会議録などを参照してカリキュラムの全体像を整理した。シュタイナーが提案した物語の語り聞かせに関するカリキュラム(第1学年から第8学年)は、文学の歴史を辿るものである。これは、彼がヘッケルの反復説を受容し、7歳から14歳までに神話や英雄伝説などの古代文化期が繰り返されるという考えによるものである。シュタイナーは、文学の歴史を独自の進化論の視点に基づいた意識の進化の歴史として解釈し、透視的意識による精神世界の観照の残響がホメロスの『イリアス』に表現されていると捉えた。しかしそのような能力は自我意識の進化とともに後退し、代用としての詩的な想像力が付与されたとされる。つまり、文学の歴史は、精神世界とのかかわりにおける人間の想像力と認識の変容を物語るものと捉えたのである。 第9学年以降は、文学の歴史の意味内実が検討される。文学史という観点は、言語のみならず、芸術性と歴史性を理解する必要があるため、「ドイツ語」「芸術」「歴史」の授業で関連して展開されている。そこでは、詩的言語の特質を学ぶだけでなく、歴史的背景を踏まえつつ、オイリュトミーなどの動きを通じて韻律などを体験しながら、言語の芸術的側面について理解を深めるカリキュラムが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シュタイナー全集のデーターベースを購入し、これを活用することで、講演録の内容などを整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.当初の予定通りに、オーエン・バーフィールドの言語論に着目し、「英語」圏におけるシュタイナーの言語観の受容と展開について検討する。バーフィールドが初期段階における言語の性質とロマン主義の詩人の想像力の違いに着目する観点は、シュタイナーの意識の進化の視点を継承したものと見做すことができる。バーフィールドは、言語の性質や意味に着目しており、言語史的側面から分析を行った。しかし、シュタイナーは神的・精神的なものを暗示的・象徴的に表現しようとするロマン主義に対して批判的である。そこで、今後は、バーフィールドがロマン主義をどのように捉えていたのか、検討することにしたい。 2.授業の題材とその取り扱い方に関する検討を行う。どのような教材を用いるかは、教師に委ねられているが、シュタイナーが提示した教材に関する意図と解釈について明らかにする必要がある。とりわけ、彼の独自の神話観については明らかにしておく必要がある。その際には、フランスの神秘学者エドゥアール・シュレーとの関係を踏まえながら、エレシウス密儀に着目している点やキリストの位置づけについて整理していく必要がある。また、神話や詩などの題材をどのように取り扱っていくのか、この点についても明らかにしていきたい。シュタイナー自身の言及に限らず、実際の学校での取り組みについても検討する。 3.ゲーテやシラー、ジャン・パウルのユーモア論、ニーベルンゲンの歌、パルツィファル等の文学作品を重視しているが、ドイツ語圏以外の国では文化的な差異、言語的な差異をどのように考慮しているのだろうか。イギリスやアメリカの事例を検討してみたい。また、平成26年度に日本の実態を調査することも勘案して、外国語教育として日本語を位置付けている学校の調査を実施することにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
シュタイナー全集のデーターベースを購入したたため、図書購入費を抑えることができた。この費用に関しては、平成25年度に実施するアメリカ合衆国のシュタイナー学校を調査する海外調査費に充てる。
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