本研究では、東日本大震災の被災地の復興に向けて行われている子どもを対象とした市民による支援活動のうち、決して大規模な団体ではないものの地域に根差した活動を実践している事例に着目し、そのうち約20団体における事例調査を行った。その結果、多くの市民活動団体(NPO法人、一般社団法人、任意団体、等)が被災した地域の大人に代わって地域の子どもを多様な観点から支援する教育事業の実態が明らかとなった。こうした市民活動の担い手には、特に震災直後に全国から被災地に入り緊急支援活動を行う団体、被災県のなかでも直接的な被害を蒙らなかった地域の団体、そして自らも被災しながら子ども支援を行う団体等があり、さまざまなおとなが使命感をもって地域の子ども支援に関わる団体である。こうした活動実践の動向は、市民活動団体が、行政事業だけではカバーしきれない住民ニーズを汲み取り、そのニーズに対応していくために創意工夫を凝らした手法で取り組むものであり、こうした個々の市民活動団体の実践が「共助」や「共生」の社会をつくりだしていく原動力となるものであった。 本研究では、最終年度(平成27年度)に『共助の社会をつくる子ども支援NPO―東日本大震災における復興支援活動調査研究報告書』として、上述のような活動を実践する16団体を対象としたインタビュー調査、および参与観察調査の結果をまとめた。本研究調査報告書をまとめるに際して、生涯学習論の観点から、活動実践者の「学び」の側面(具体的には、「被災地で事業を行うに際して配慮した点」と「事業を実施する過程で得られた視点」)からの分析を行った。
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