研究課題/領域番号 |
24730669
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 祐介 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00423434)
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キーワード | 教育委員会 / 行政委員会 / 首長 / 教育長 / 地方自治 / 地方教育行政 / 執行機関多元主義 / 中央教育審議会 |
研究概要 |
本年度は,教育委員会制度に関する首長・教育長への質問紙調査の実施・分析を中心に研究を行った。研究の成果はおおむね次の通りである。1)教育委員会制度の弊害や短所として指摘される点の多くについて,首長・教育長とも「そう思わない(「どちらかといえばそう思わない」を含む(以下同じ))」が過半数を占めた。2)「市町村教育委員会制度は制度の趣旨に沿ってよく機能している」は,首長の半数強,教育長の約3分の2が「そう思う」と答えている。「貴自治体の教育委員会は制度の趣旨に沿ってよく機能している」は,首長の7割弱,教育長の8割強が「そう思う」と答えていた。また,2004年に首長に対して実施した同種の設問に比べて,5ポイント程度「そう思う」との回答が増加しており,教委の運用実態に改善の傾向がみられた。3)今後の教育委員会制度の在り方に関して,制度改革の選択肢についての賛否をそれぞれ尋ねたところ,「合議制の執行機関としての教委制度を維持しつつ制度的改善を図る」に対しては,首長の57.2%,教育長の67.4%が「賛成」,「教育委員会を諮問機関として,教育長を教育行政の責任者とする」に対しては,首長の57.6%,教育長の50.1%が「賛成」であった。4)「現行の教育委員会制度を廃止して,その事務を市町村長が行う」に関しては,首長の10.5%,教育長の2.2%が「賛成」と答えるにとどまり,首長の58.4%,教育長の84.7%が「反対」と回答した。 以上の結果は現実の教委制度改革の議論とは異なっており,改革の方向性と首長・教育長の認識や見解とは乖離があることが示唆された。これらの調査結果は教委制度改革論議において学界のみならずメディア等でも多く言及されており,学術的・社会的両面において重要な基礎データとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である教育委員会制度に関して60年振りの大規模な改革が行われる見通しになり,本研究も当初の計画とは異なる展開をたどっている側面はあるが,当初の目的を達成するための調査研究は実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
教育委員会制度の改革が現実に行われようとしているため,学術的進展に加えて,社会的要請にも対応した研究の推進が求められる状況にもある。他方で,改革後の制度の効果を検証するためには現行制度下の実態をよく把握しておく必要があり,その点からも本研究はおおむね当初の計画通り推進する予定である。
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