最終年度は、2015年の新教育委員会制度施行後の変化について情報を収集するとともに、これまで重視してきた民主性の側面に加えて、教育行政の専門性の観点からも、今次改革の理解および今後の課題を分析・検討した。成果としてはいずれも学術論文等で公表しているが(一部は平成28年度に入ってから公表された)、その概要は以下の通りである。 第1に、各種の調査等の結果を総合すると、総合教育会議については自治体ごとに運用実態に差異が生じており、会議で取り上げる内容や会議の回数、構成員についても多様なバリエーションがみられる。また、教育長人事の同意プロセスは多くの議会で従来よりも丁寧に行われるようになっていた。引き続き変化を追跡することに加えて、実態を規定する要因や総合教育会議の実態が政策帰結に与える影響などを明らかにすることが今後の課題となる。 第2に、教育行政の専門性の観点から今回の制度改革の背景を考察し、専門性の信頼低下が今次改革の背景として指摘できる一方で、地方政治の構造変動が改革の大きな要因であることを述べた。また、政治的統制や市場的統制によって教育あるいは教育行政の専門性をコントロールするだけでなく、専門性を自律的に統制できるメカニズムも合わせて必要であることを述べ、その具体的方法として、行政職出身職員の教育行政における専門性向上の現状について、質問紙調査の結果から検討を加えた。行政職出身者がもっぱら教育委員会事務局に勤務する「教育行政プロパー」人事は数都道府県で実際に見られるがその数は少ないことや、行政職が指導行政に関与するかどうかで自治体ごとに違いがあることを指摘した。
|