研究課題/領域番号 |
24730672
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (50454153)
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キーワード | 自己形成 / ハーバーマス / ホネット / 社会化 / プラグマティズム / 教育学 |
研究概要 |
社会化による個性化という相互主観性にもとづく自己形成には、大きく三つの理論的背景がある。第一は、フランクフルト学派における哲学的理論と経験的研究との結びつきを重視する観点である。ハーバーマスは、1968年に社会化に関する論文を書いているが、そこですでに、経験的研究との結びつきを考慮したうえで、人間の行為を解釈する枠組みの必要性を述べている。とりわけ、役割取得は、学習という観点から捉えると、賞罰による行動規制とは明らかに異なる側面を有しており、シンボリックな相互関係へ目を向ける重要なきっかけとなっている。ヨアスによれば、ミード理論の眼目は、相互主観性にもとづく主体形成にあるため、ハーバーマス、ホネット両者ともに、ミード理論を相互主観性理論として解釈し、(両者の重点や取り入れ方、解釈内容は異なるとしても)取り入れている。そのため、ハーバーマスとホネットの相互主観性の捉え方は、非常に社会理論的であり、ドイツ現象学における捉え方とは異なったものといえる。 第二は、ホネットはデューイ思想と出会うことによって、単なる手続き主義とは異なる協働にもとづく民主的な意志形成の視点を取り入れる。いいかえれば、自己形成に含まれる一つの側面として、デモクラシーの再構成に寄与する意志形成が重視されるのである。ホネットに従えば、愛の関係である情緒的関係と法的関係のあいだに位置する学校教育において、相互主観的な自律へ向かう民主的な意志形成をおこなう、という教育的課題が顕現する。この課題は、正義をめぐる問題につながり、倫理・政治的領域における自己形成という視点の重要さを示唆するものである。 第三は、相互主観性にもとづく自己形成は、個人か社会かという思考枠組みを前提としつつも、個人と社会という二分法によって捉えることの出来ない出来事を説明しようとすることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互主観性にもとづく自己形成に関する新たな視点を獲得することができ、倫理・政治的領域への広がりが明らかになり、おおむね順調に進んでいる。 しかし、異動にともなう資料不足(絶版等)などにより、思想史的背景に関して十分に解明されていない点もあるため、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果をふまえたうえで、相互主観的な関係における自己形成論を構築する。その際、特に、人間形成の形態変化、社会化による個性化という自己形成の思想史的背景に着目し解明を進めていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
古書(絶版等)の購入が当該年度に十分実施できなかったことによる。 古書(絶版等)の積極的かつ十分な購入を実施する。
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