社会化による個性化という自己形成論は、人間形成(Bildung)の視点と次の点で重なる。第一に、人間形成過程におけるアイデンティティ形成は、社会化による個性化のひとつの現れであり、自らの要求を述べ行為することを相互行為や関係の網のなかで進めることによって可能になる。第二に、相互主観的な関係における傷つきやすさは、受容的態度や積極的態度から発生するというよりも、反応(リアクション)の観点から捉えることができる。なぜなら、ある行為や出来事に対する反応のやりとりによって社会化と個性化が進むのであり、とりわけ、反応の多様さが個性化を促進することになる。このことは、教育関係を反応の次元から捉え直す視点を開く。この視点からみれば、均質さは反応の一様さによって生じるといえる。第三に、人間形成形態は、主体がどのように世界をとらえ自己を形成してきたのかを捉える視点である。とりわけ、社会化による個性化の変容は、社会のなかで個人的な自己の意志や考えを実現することに伴う葛藤や苦悩として、自己を語るという行為のなかに現れる。したがって、社会化による個性化の「どのように」という側面を明らかにするためには、生を語ることとの接続が重要である。第四に、社会化による個性化とは、自己の発展と世界を切り開くことを折り合わせながら、人間形成が進められることであり、そこには深い学習や育つことが入り込んでいる。そのため、相互主観的な関係は、言語と感情という学習に影響を与える二つの側面から捉えることが重要であり、承認関係を含んだ次元から捉える必要がある。さらに、世界を切り開くことは、複雑な自己を構成し展開することにつながり、自己形成にとって欠かすことのできない側面である。
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