研究の最終年度にあたり、第1に前年度に引き続き教員養成を行った公私立各種学校に関する資料調査を継続した。具体的には、愛媛県立図書館、筑波大学附属図書館への調査を行った。いずれについても府県教育会雑誌を中心に調査を行い、個別の事例を収集することができた。前年度の調査から、断片的な資料が多くを占めていることが判明していたため、これらに加えて文書館の調査および各府県教育史等の書籍の探索も計画した。このうち、府県教育史については可能な限りの事例を収集することができた。一方、文書館についてはまとまった資料を見出すことができず、今後の課題として残された。第2に、郡誌を中心に引き続き公私立各種学校の事例を収集した。 これらにより収集することのできた事例、すなわち教員養成を行った公私立各種学校の事例として見出されたのは約90の事例であった。本研究では尋常・高等小学校の本科教員を対象としたため、これら90の事例には地域的な偏りが見られた。概括的に述べれば、東海・北陸地区以西において設置される事例が多いことが見出された。また、設置主体については地域的な傾向は見られず、それぞれの事情に基づいて郡・市が設置するもの、教育会が設置するもの、財団法人が設置するもの等、混在していることが判明した。 ただし、残念ながら断片的な資料を中心として検討せざるを得なかったため、公私立各種学校が全体として小学校教員養成に果たした役割を一般化して明示することは困難であった。今後、個人が小学校教員養成教育に果たした役割という視点、また公と私、あるいは学校と学校以外といった視点から検討を重ねていく必要がある。
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