研究課題/領域番号 |
24730677
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (30513311)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幼年期リテラシー / 貧困 / 学校システム |
研究概要 |
24年度は、贈与交換論を参照枠とした幼年期リテラシー教育の理論枠組みの検討を主要な課題とした。 現代の貧困問題に取り組むリテラシー教育を検討するためには、リテラシー教育に対する外からの統制としてだけでなく、その授業実践を内側から統制するコミュニケーション構造のレベルで市場原理が浸透・統制している現状に目を向ける必要があると考え、贈与論に注目した。マルセル・モース(Mauss, M.)やレヴィ=ストロース(Levi-Strauss, C.)を代表的論者とする贈与論は、近代社会を支配する市場交換を相対化し、それとは異なる財と資源の配分メカニズムを提起する議論であり、互酬性、異質性を前提とした応答的なコミュニケーションを基調としていることが明らかになった。この理論枠組みをリテラシー教育の構想へと発展させる読みの教育の一つとして、「協同的読み」の実践を取り上げ、検討した。 また、次年度の予備的な作業として、オーストラリア・クイーンズランド州における幼児期リテラシー形成の取り組みについて、政策枠組みと就学前教育での取り組みを分析した。QLDの幼児期リテラシー形成の取り組みは、社会的公正の追求という文脈でリテラシー形成が図られている。ひとつには、徹底して子どもたちの社会経済的、文化的背景を足場とした学びを展開しようとしている点である。二つには、教育内容として多文化、公正、他者性といった社会的論点が幼児期段階でも取り入れられ、ことばの獲得と結びつけて展開している点である。これはビュランダ小学校の実践に示されている。これらの要素が相まって展開される中で高い水準のリテラシー形成が図られていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の研究成果については、2本の論文(学術図書のチャプター)としてまとめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、オーストラリアにおける幼年期リテラシー教育(Literacy in Early Childhood)の教育課程政策、実践事例を学校システムという観点から検討することを課題としている。この現地調査を効率的に進めるにために、現地学校での観察許可および教育課程行政の担当者等とのアポイントメントをとっている。現在のところ、全国レベルで注目の高い実践を行っているビュランダ州立小学校とフォレストレイク州立小学校への訪問を予定している。一連の研究成果は、国内の学会発表、大学紀要、学会誌への論文投稿などによって発表する
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次年度の研究費の使用計画 |
購入した物品が予定より安価で購入できたため、若干であるが残額が生じた。 25年度はオーストラリアでの現地調査を予定しているため、予算の大半は旅費となる。
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