研究課題/領域番号 |
24730678
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 実歩子 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (30411846)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学力向上 / 教育スタンダード / 教育評価 / ドイツ語圏 |
研究概要 |
本年度は、大きく理論研究と制度研究を行ったと考えられる。 前者の理論研究については、「ドイツ語圏における教育パラダイムの転換ーー教育スタンダード策定の中央集権化と広域化ーー」(『教育目標・評価学会紀要』第22号、2012年、pp.43-52)にまとめた。本論文では、ドイツ語圏において教育スタンダードの実施の拡大・浸透する現象が、一方では国家あるいは各州や教育機関に集権化する傾向を含んだものであることを指摘した。それは、ドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏地域の教育スタンダードの定義および実際のドイツ語の教育スタンダードを比較検討することで明らかになった。教育スタンダードの導入が、同地域の教育パラダイムの転換とみなされるほどにインパクトがあることにも言及した。 後者の制度研究については、「ドイツ語圏の中等教育改革に関する一考察ーーオーストリアにおけるNeue Mittelschuleの取り組みーー」(『甲南女子大学研究紀要 人間科学編』第49号、pp.1-10)にまとめた。本論文では、ドイツ語圏の中でもオーストリアの中等教育改革に注目した。PISAなどの結果から子どもの学力低下が問題となっている同国が、学力向上のために、教育スタンダードおよび教育スタンダードテストの実施だけでなく、長年ドイツ語圏地域の教育問題とされてきた分岐型教育制度(10歳段階での早期選抜)の改革に着手し、Neue Mittelschuleという、これまでのHauptschuleに代わる新しい学校種に改編している状況およびその問題点を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究一年目に当たる今年度は、ドイツ語圏の教育改革の現状を、その学力向上政策にもっとも影響があると考えられる教育スタンダード導入に着目することで、同地域の教育パラダイムの転換が起こっていることを、示すことができた。また、そのパラダイムの転換が、長年同地域の教育問題である教育制度にまで及んでいるオーストリアを分析の対象とし、その現状(NMSの実施)を指摘することができた。 今年度の目的に上げていた、NMSの検討(制度面)およびコンピテンシーの検討(理論面)は今後も継続する必要があるものの、おおむね順調に成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、次年度以降も継続して、理論研究、制度研究(実証研究)に取り組むものである。教育スタンダードを推進する教育省や教育研究機関への訪問調査、およびそれに対してこのような現在の動向に批判的な動きを見せる学会やシンポジウムへの参加によって、現地調査でしか収集できない情報を得たいと考えている。また今年度において資料の収集がおおむねできたと思われる、コンピテンシー関係の文献(すなわちドイツ語圏の学力に関する1980年代から2000年代の文献)の検討を始めなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、現地調査や学会などの日程調整が困難であったため、海外渡航費分を次年度に繰り越している。4月上旬に渡航し、現地での情報収集および学会参加を考えている。 また次年度後半においては、研究の進捗状況を予想すると、再度現地調査が必要だと考えられる。また今年度からの積み残しの成果を発表することも精力的に取り組みたいと考えている。
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