研究課題/領域番号 |
24730678
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
坂本 実歩子 (伊藤実歩子) 立教大学, 文学部, 准教授 (30411846)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PISA / エビデンス / コンピテンシー / ドイツ / 作文教育 |
研究実績の概要 |
本年度は、PISA型教育改革が進行する現在において、それに対抗しうる教育実践、教育評価のあり方を、日本とドイツの比較という視点から探究した。 ドイツのドルトムント工科大学では、Theory and Practice of Non-”Evidence-based” Educational Assessment in Japanというタイトルで招待講演を行った。ここでは、日本の教育実践史において、かつて子どもの学びの姿をとらえ、教育的に評価し、同時に彼らを指導する教師の試行錯誤の方法を書きとめた生活綴方や実践記録の方法史を取り上げた。これらは、PISAに代表されるエビデンスベースの教育改革に対抗しうるものとして、なおかつ、これらの方法が、現職教育にも資するものとしてとらえることができる。 加えて、日本の生活綴方とドイツの作文教育の比較検討の結果、いずれにもコンピテンシーによるカリキュラム改革の影響が散見された。例えば、国語の教科書は「読む」「書く」「聞く」といった要素型のコンピテンシーによって構成されていることなどがそれにあたる。しかしながら、このような共通性は、両国の作文教育をその歴史や伝統を越えて共通化することはできず、日本においては子どもの心情を表現する指導が、ドイツにおいては物語を創造する指導が行われていることが明らかになった。 本年度の一連の研究では、ドイツ語圏の教育評価を検討するうえで、日本の教育評価および教育実践をドイツで紹介することによって得た両国の相違性および共通性を相対的にとらえることができた。ドイツ語圏、日本ともにPISAなど大規模学力調査の影響が教科書レベルまで及んでいることが明らになった一方で、それによっては共通化されない、本研究が射程に入れている教育実践の多様な実態を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
育児休暇を取得後、子育てと両立しながらの教育・研究への復帰には主に二つの困難があった。第一に、長期の海外出張ができないこと。第二に、週末に開催される国内学会への参加も以前のようにすべてには参加できないことである。いずれも、週末などの預け先がないことが主な要因である。したがって、研究期間の1年間延長を決めた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度の本年においては、ドイツで教育評価に関する資料調査、インタビューを計画している。ドイツ語圏の学力ということばの定義の変遷史、教育評価の方法の歴史などがその対象になる。また継続的にPISAやPISA型教育改革に対する批判的な論考の検討も行う。これらの成果は、国内外の学会で発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に、産休・育休を取得し、その後平成29年度に研究を再開したが、育児との両立から、海外出張などが計画通りに実施できなかった。そのため、研究期間を1年間延長し、海外調査や国内外での成果発表を行いたいと考えている。
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