研究課題/領域番号 |
24730688
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東海学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
古里 貴士 東海学院大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00610271)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高度成長期 / 社会教育 / 公害教育 / 環境教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、高度成長期の三重県四日市市を事例に、経済成長と生存権のせめぎあいが民衆意識にいかなる影響を与えたのか、またそれに対し、地域レベルでいかなる教育政策が展開され、民衆意識に働きかける公害教育実践が行われたのかを明らかにすることである。特に、2012年度は、高度成長期の四日市市における社会教育政策の展開を明らかにすることを研究課題として設定し、地区市民センターに残された資料の収集と分析を行うよう予定していた。 しかし、2012年度は当初の予定を変更し、70年代初頭に展開された四日市二次訴訟の運動とその中で営まれた学習活動に関する調査を実施した。予定を変更した理由として、2012年が四日市大気汚染訴訟の判決からちょうど40年目に当たり、地元四日市の中から裁判に関する歴史の掘りおこしを求める声があがったことが挙げられる。二次訴訟にかかわる学習活動については次年度以降の予定にもともと組み込まれており、前倒しする形で研究課題を変更した。 2012年度に取り組んだ調査内容は、(1)四日市公害を記録する活動に長年取り組まれてきた沢井余志郎氏へのインタビュー、(2)四日市市立図書館地域資料室に保存されている二次訴訟関連の資料調査・収集、(3)地元紙『伊勢新聞』での四日市公害に関する報道内容の調査と資料収集である。調査の中で二次訴訟が公害児童の母親たちによって担われていたことが明らかになったため、特に(2)や(3)では公害児童に関する資料調査・収集も並行して行った。また、その成果は、日本社会教育学会第59回大会(北海道教育大学釧路校)で「四日市大気汚染訴訟下における公害から子どもを守る塩浜母の会の運動-その展開と帰結」と題して報告するとともに、四日市住民の学習会においても報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度は当初の予定を変更したものの、二度の調査を実施することができ、その成果を学会において発表することができたため、おおむね順調ということができる。ただし、以下の点について、さらなる調査が必要である。 (1)二次訴訟にかかわって行われた学習活動への参加者へのインタビュー:二次訴訟にかかわるインタビューについては沢井余志郎氏を対象に実施することができたが、学習活動への参加者に対してはインタビューを実施することができなかった。当時、小学校教員であった方が学習活動の中心にいたことや、その方の連絡先までは調査の中で把握できているため、2013年度にはその方へのインタビュー調査を実施したいと考えている。 (2)病弱教育史にかかわる調査:二次訴訟の運動には公害児童の母親たちが大きく関わっていることが調査の中で明らかになっているが、特に二次訴訟の関わりが大きかったのが公害児童のための養護学校建設運動の展開である。母親たちが担った養護学校建設運動を当時の社会状況の中に位置づけるためにも、戦後病弱教育史、特に病弱教育制度史にかかわる調査が必要であり、2013年度に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように2012年度の調査ではいくつかの課題を残したままになっている。また、2012年度の四日市二次訴訟にかかわる学習活動の調査(以下、二次訴訟調査)を実施する中で新たな課題も生まれてきていることから、2013年度は引き続き二次訴訟調査を継続し、2012年度の研究をより深めるかたちで進めていきたいと考えている。 2013年度に取り組む内容は、(1)地元紙『伊勢新聞』を用いた四日市公害関連の事実の掘り起し作業、(2)二次訴訟にかかわって実施された学習活動への参加者インタビュー及び資料収集・分析、(3)病弱教育史、特に病弱教育制度史にかかわる資料収集である。(1)については、『伊勢新聞』が四日市市に部分的にしか残されていないため、三重県立図書館に保存されたものを用いて調査を行なう予定である。また、(2)についてはすでに一名の方にアポイントをとれるよう段階まで準備はできているため、アポイントを取ったのちすぐに調査にうつるとともに、他の参加者を紹介してもらう形でさらなるインタビューを進めたい。(3)については、全国病弱教育連盟編『日本病弱教育史』(1990)を手掛かりに調査を進める。 こうした作業を通じて、2012年度に日本社会教育学会で行った発表の内容を補強し、2013年度内に論文化を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度及び2013年度実施のインタビューをテープ起こし業者へ発注する際の代金の一部として使用する予定である。
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