文部省は昭和5年に訓令「家庭教育ニ関スル件」を出して家庭教育の責務が女性にあることを示し、母親を対象とした同省主催「母の講座」を全国で委嘱開催して母親に必要な資質を育成しようとした。一方、委嘱先の一つの奈良女子高等師範学校では文部省主催「母の講座」を同省主催「成人教育婦人講座」の延長と捉えていたため、母親を主な聴講対象として捉えていなかった。しかし、日中戦争が起こると、同校は文部省主催「母の講座」の目的を国民としての子どもの育成という母役割の達成にあるとした。このことから、戦争によって文部省と奈良女子高等師範学校の講座に対する解釈が一致したといえる。
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