研究課題/領域番号 |
24730699
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
井本 佳宏 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 講師 (10451501)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分岐型学校体系 / 中等教育学校 / 社会システム理論 / 旧東ドイツ / 二分岐型中等学校制度 |
研究概要 |
本研究では、中等教育制度再編に関する日独比較研究を通じて、ポスト単線型の学校体系モデルを構築することを目指している。そこで、平成24年度は、①日本における中等教育学校の学校体系内における位置づけを解明すること、及び②次年度以降の研究のための準備として旧東ドイツ地域における中等学校制度に関する資料の収集を進めることを計画していた。 ①については、中等教育学校創設にみられるような、日本における学校体系の再分岐型化指向の教育制度論上の意義について、ルーマンの社会システム理論に依拠して分析を進めた。そこから、教育システムにおけるインフレからデフレへの移行局面において、学校体系の再分岐型化指向が生じるとの仮説が立てられることを示し、今後の実証研究における課題を提示した。 ②については、旧東ドイツ地域における中等学校制度に関する諸資料、特に生徒数の推移や進路選択の状況に関わる資料の収集を進めた。さらに、資料収集にとどまらず、旧東ドイツ地域における二分岐型中等学校制度の教育制度論上の意義についての分析まで研究を進め、ザクセン州とメクレンブルク-フォアポンメルン州を取り上げて分析した。そこから、ザクセン州における中間学校(基幹学校と実科学校に相当)の生徒数回復状況や、メクレンブルク-フォアポンメルン州における小規模校維持の取り組みの状況から、三分岐型から二分岐型へという旧西ドイツ地域における流れとは異なる、ポスト単線型としての二分岐型中等学校制度の特質が見られることを指摘した。 以上のとおり、平成24年度においては、次年度以降に旧西ドイツ地域の事例も含めて日独比較研究を進めていく上での基盤となる研究成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度においては、①日本における学校体系の再分岐型化指向の教育制度論上の意義を解明すること、及び②次年度以降の研究のための準備として旧東ドイツ地域における学校体系に関する資料の収集を進めることを計画していた。 ①についてはほぼ計画のとおり進めることができた。また、②については、当初計画していた資料の収集にとどまらず、それをもとに分析を進め、当初予定になかった学会発表まで行うことができた。 以上の理由により、研究の進捗状況については、「当初の計画以上に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、当初の計画以上に研究を進めることができた。そのため、研究を進めていく上でスケジュール的には少し余裕が出てきている。このスケジュール上の余裕については、今後の研究スケジュールを前倒しすることに使うだけでなく、研究内容の質的充実のためにも活かすことを考えている。旧東ドイツ地域ににおける中等学校制度改革の動向については、すでに生徒数の動向などに着目して分析を行い、一定の成果を得たが、今後は政治状況等の視点からの再分析を行うなど、より多面的なアプローチを試みることで、研究に厚みを加えていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に支出を予定した研究費のうち、2万円余りが次年度に繰り越すこととなった。研究の進捗が順調であったこと、ドイツの中等学校制度に関する諸資料について、多くがウェブ上に公開されており、インターネット経由で無料での入手が可能であったことなどにより、経費の節減が可能となったためである。 平成25年度および平成26年度にはドイツへ渡航しての関係諸機関への訪問調査を計画しているが、平成24年度末現在、急速な円安が進行していることから、出張旅費が本研究の申請時の見込みを大きく上回る可能性が高い。また、その他欧文文献の日本円価格も外国為替の変動に伴い相対的に高くなることが見込まれる。繰り越した研究費を活用することで、円安に伴う実質的な研究費の目減りを補い、研究計画に支障をきたさないようにする計画である。
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