研究課題/領域番号 |
24730701
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
杉山 晋平 福井大学, 教育学研究科(研究院), 特命助教 (30611769)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニューカマーの若者たち / 移行過程 / 学校教育 / 支援者の力量形成 / 文化的多様性 / 学習論 / 協働実践研究 |
研究概要 |
本研究は、高校教育から就労・進学へと向かっていくニューカマーの若者たちに注目し、その移行過程の客観的形成と日本で生きていくことの意味を培う主観的経験との相互作用を分析し、多様な言語的・文化的背景をもつ若者たちに固有の学習経験の性質を明らかにすることを目的とする。本年度は、下記の4つの柱を軸に研究を進めた。 (1)基礎研究:国内外の先行研究の整理を進めた。従来の欠陥理論に代表される本質主義に対する批判から議論を一歩進め、新たな研究段階を切り拓くために「学習論」からのアプローチが必要となることを再確認した。また、それにともなって人間の学習における文化的多様性と変革力を記述する分析の枠組みとして、社会歴史的アプローチ・文化歴史的活動理論の意義を検討した。また、下記(4)との関わりにおいて、教育実践者・支援者の力量形成をめぐる理論的枠組みの検討も進めた。 (2)聞き取り調査:既卒・中退者への追跡調査に着手した。在校時、卒業・中退前後、その後の状況について当事者解釈も合わせて聞き取り、ニューカマーの若者たちの移行局面における困難の実態及びその教育的支援のあり方について検討した。 (3)実践調査:各地域の独創的な学校教育実践を観察すると同時に、その展開の歴史について聞き取り調査を行った。結果、当該の若者たちの可能性を最大化する教育環境の持続的形成においては、それを支えていく教師たち自身の学習と学校改革のあり方が要となることを確認した。 (4)協働実践研究:調査協力地域の中から、学校関係者・教育委員会と連携しながら、定期的なケース・カンファレンスと支援者の省察的実践を組織化していく準備を進めた。その中で、支援者各自の意識改革・教育実践の展開・それを支える組織体制の充実を連関させ、他地域・異領域の専門職との交流を通じて自分たちの実践の価値と課題を吟味していくことの必要性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、国内3地域を調査対象として研究を進める予定であったが、次年度以降の研究計画上、そのうちの1地域を申請者の勤務する福井県内へと変更する判断をとったため、その分聞き取り調査及び実践調査についてやや遅れが生じた。基礎研究及び上記以外の調査地域における各調査については、概ね予定どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
各調査及び協働実践研究については、当初の予定通り進める計画である。変更した地域の調査についてはやや遅れが生じているが、申請者の勤務する教職大学院関係者、教育委員会及び調査対象校との連携が充実しており、特に平成24年度に明らかとなった「支援者の力量形成」という視点からの研究については当初の計画以上に組織的な研究が展開できる見込みである。 また、地域間の実践連携・交流については、申請者の勤務する福井大学教職大学院が年に2回開催する「実践研究福井ラウンドテーブル」の活用を通じて、質の高い実践の省察が進められることが確認できた。平成24年度は3地域の調査協力者・支援者の参加を実現したが、次年度以降は相互の実践連携・交流を促進し、本研究課題における地域間の協働実践研究を促進する推進方策として「実践研究福井ラウンドテーブル」の場を活用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は約19万円の残額が生じた。これは、海外調査の次年度繰り越し、調査対象地域の変更にともなう国内旅費の変動によるものである。 平成25年度は、当初の計画にしたがって調査・研究打ち合わせにともなう旅費を中心に研究費を使用する。上記繰り越し分に加え、調査対象地域の変更にともなう旅費支出の変動も加味し、研究成果の発信準備(学会参加等)及び調査協力者の「実践研究福井ラウンドテーブル」を通じた地域間協働実践研究のさらなる促進に使用する計画である。
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