本研究は、イギリスの大学と企業における「アカデミック-職業ディバイド」(academic-vocational divide)の実態とその諸要因を解明することを目的とする。大学と企業に対する質的ケース・スタディにより、多角的な視点でディバイドの実態を明らかにし、以前の学校調査との整合性を検証した上で、イギリス社会におけるディバイドの実態とその諸要因に関する新たな知見を提示する。 平成26年度においては、12月と3月に現地調査を行った。12月の調査では、主に中等学校と協働して職業教育に取り組んでいる企業の担当者にインタビューを行った。また、それに加えて、そのような企業と中等学校の協働を促進するエージェントについても訪問調査を行った。次に、3月の調査では、大学アドミッションセンター職員及び企業の人事担当者にインタビューを行った。また、企業の人事部(HR)の調査については、機密性にかかわる理由により調査受け入れの点で課題があると予想していたため、セクター・スキルズ・カウンシル(特定の産業部門に対応する雇用者の団体)への調査を補足的に行った。それにより、個別の企業調査では明らかにすることができない業種全体の傾向などについても調査することが可能となった。 以上の調査により、トップ20圏外の大学においても、トップの大学と同様にアカデミック資格を職業資格よりも重視する場合があることや、中等学校と企業の地理的距離が協働の取り組みに影響を与えることなどが明らかとなった(後者は以前実施した学校教員へのインタビュー調査の結果を裏付けるものである)。
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