研究実績の概要 |
最終年度は、これまでの研究知見を総合して考察した。本研究では反社会的問題行動をおこす中学生と学校教師、一般生徒との関係性が3年間でどのように形成・変容するのか探ることを目的に、「荒れ」たと評価されていた1つの中学校(A中学校)の1学年を対象にして、3年間の実践関与的なフィールドワークをおこなった。その結果、(1) 「荒れ」状況に対しては、教師の「一般生徒を育てる」ことを目標として関わる機会を増やすと同時に、問題生徒を集団のルールにあてはめるのではなく、個別ニーズにあわせた関わりのの結果、問題生徒の暴力行為は減少し、一般生徒も学級のまとまりを意識しはじめたことで、全体として落ち着いてきたこと、(2) 2年生の後半から3年生にかけて、問題生徒のなかには、学級集団のまとまりを基盤として、学級に居場所をみつける生徒がでた一方、さらに疎外感をつのらせ、次第に校外の非行生徒とのつながりを強める生徒もいたこと、(3) 教師は、こうした問題生徒に対して、他校生とのつきあいを抑制するよりむしろ、何でも自由に話せる雰囲気を作ることでモニターしつつ関ったり、学習活動以外の活動への関与させる機会を多くした結果、問題生徒も学校とのつながりを意識し、将来展望をえがくことができはじめたことがわかった。まとめれば、問題生徒の個的な行動改善よりも、集団を育てることによって抱える環境を創ったことや、教師の見方・関わり方が、規範に生徒をあてはめるものから、問題生徒の軌跡に「ついていきながらの支援」に変わるなど、全体的布置が創造的に変化したことが、中学生の反社会的問題行動の抑止にもつながることがわかった。以上の結果を国内学会や、シドニーで開催された第4回ISCARで発表し、意見交流をおこなったほか、著書(翻訳『リジリアンスを育てよう』の解説)、あるいは学会誌(家族療法研究,30巻)でその一部を発表した。
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