本研究課題では、日本に暮らす幼児や児童の外国語話者と日本語話者に対する選択的に信頼する傾向を調べた。 Kutsuki(2015)、久津木(2013)及び(2012)では、比較的外国との接触が少ない通常の保育園・幼稚園に通う幼児を対象に、外国語に対する意識や、外国語を話す対象に対しての信頼をインタビュー及び実験的手法をもって調べている。欧米等で行われた研究では、主流言語に対しての”外国語”話者は、他の能力も劣っていると幼児では扱われる傾向があったが、そのような傾向はあまりみられなかった。外国語を話すこと、とくに”英語”に関して日本ではその社会的価値が高く、幼児もある程度そのように感じているようである。よって、英語を話すことや、英語を話す人は評価されており、選択的信頼課題においても、他研究のようにネガティブに解釈されないことが判明した。久津木(2014)及びKutsuki(submitted)では比較的、外国文化や外国と接触が高い国際学校の児童を対象に、外国人の文化的エラーに対する寛容性がどのような要因によって形成されているかについても質問紙調査を行った。その結果、以下のよな要因によって、より子どもは外国人に対して過剰に寛容ではなくなることが浮かびあがった。子どもの年齢(学年)、子どもの海外滞在経験の長さ、母親の母語が外国語であること、そして、母親が外国や自国の文化に関して語る傾向の高さ。各研究の方法は異なるものの、日本という文脈における外国や外国語(特に英語)に対する意識はそれらにあまり接触のない子どもは良いものだと解釈する傾向があり、年齢及び経験の蓄積により、フェアなものに変化することが示唆された。
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