研究実績の概要 |
本研究の最終年度となる今年度は、これまでの研究で得られた情報やデータを整理し、韓国における才能教育の実態について分析をおこなった。その結果、李明博政権以降、才能教育の実施権限が地方に委譲されていくとともに、国からの財政的支援も急減していることが明らかになった。こうした中でも韓国の才能教育機関は量的拡大を続けており、2013年時点で3,083機関で16万4,044名の子どもが公的な才能教育プログラムを受けていることが分かった。これは同年齢層の2.5%に相当する。しかしながら、こうした才能教育の量的拡大は、地方にとって最も設置が容易で財政的負担も少ないタイプの才能教育機関である「英才学級」の増加によるところが大きく、必ずしも高度で専門的な才能教育を受ける機会が拡大していることを意味しないことも明らかになった。中には、財政難から才能教育の政策的優先順位を引き下げたり、原則無償であった才能教育プログラムの有償化を検討する自治体も出てきていた。才能教育の実施権限の地方への委譲は、才能教育の多様化や地域のニーズに応じた実践の開発を促進する一方で、地方の財政状況によっては才能教育の機会の地域間格差の拡大や才能教育の全体的な質低下をもたらすおそれがあるといえる。
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