研究課題/領域番号 |
24730716
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
宮崎 元裕 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (20422917)
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キーワード | トルコの宗教教育 |
研究概要 |
平成25年度は研究実施計画に沿う形で、トルコでの聞き取り調査を中心に研究を進めた。トルコの2012年の義務教育改革によって、多元的宗教教育にも大きな影響を与える改革が行われたため、海外調査以前には2012年の教育改革に関する情報の収集・整理・分析を行い、調査時には教育改革に関する情報収集及び意見交換を中心に行った。 その結果、2012年の義務教育改革によって、宗教関連の選択科目が新設されるとともに、1997年に廃止されていたイマーム・ハティプ中学校が再開されるなど、イスラームに関する教育の強化傾向が明確になっていることが確認できた。再開されたイマーム・ハティプ中学校は、1997年以前よりも宗教科目が強化されている。また、宗教関連の選択科目として新設された「クルアーン」「ムハンマドの生涯」「宗教の基礎知識」の3科目は、イスラームに関する知識と理解を深めるための科目であり、この点もイスラームに関する教育の強化である。従来、公立普通学校では、宗教教育は「宗教文化と道徳」という科目でのみ行われていた。この「宗教文化と道徳」は、イスラームの教えそのものを教えるというよりもイスラームを題材に現代的な道徳を教えることに重点が置かれている点や、他宗派・他宗教について学ぶことを重視しているなどの点で、イスラームから少し距離を置いた宗教教育であり、その意味では多元的宗教教育として積極的な教育的意義を有している。選択科目として新設された宗教関連科目には、既存の「宗教文化と道徳」と重複する内容もあり、この重複が今後どのように整理されていくのか(あるいはそのままなのか)によって、トルコの多元的宗教教育を巡る状況は大きく変化することになる。2012年の義務教育改革に伴うイスラームに関する教育の強化という動きを踏まえながら、トルコの多元的宗教教育についての検討を進める必要性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トルコの2012年義務教育改革に伴い宗教教育に関しても重大な改革が行われたことで、この改革に関する情報収集・整理・分析を集中的に行う必要が生じた。また、この改革によって、トルコの多元的宗教教育のあり方も今後大きく変化する可能性が高く、当初想定していた分析視点とは異なる視点から多元的宗教教育の意義と限界について分析する必要性も生じた。こうした理由から、2012年義務教育改革に関する分析に時間を費やさざるを得なかったため、当初予定していた、イギリスの多元的宗教教育に関する分析と学会での成果発表が予定通りに進めることができなかった。 しかし、トルコでの聞き取り調査等を通じて、2012年義務教育改革に伴う宗教教育の変化とその影響について情報収集を行うことができた。最新の教育改革を踏まえた上で、多元的宗教教育について検討を進める下地を作ることができた点は、今後の研究内容の深化につながることと思われる。また、2012年義務教育改革によって、それまでの宗教教育に変化が生じたことは、ある意味で、これまでの多元的宗教教育のあり方がトルコでコンセンサスを得ていたわけではないことを示していると解釈できる。2012年義務教育改革によって、研究の達成が予定より遅れた部分もあるものの、予定とは違った観点から分析を進めることができたという点で、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる今年度は、平成24年度・平成25年度に得られた研究成果を踏まえながら、多元的宗教教育の意義と限界について検討を重ね、その成果を発表する。まず、トルコにおける2012年教育改革が宗教教育に与えた影響についてさらに研究を進め、7月に日本比較教育学会の年次大会でその成果を報告する。トルコの2012年教育改革によって宗教教教育に生じた変化(イスラームに関する教育の強化)によって、当初予定していたイギリスとの比較だけでなく、イスラーム圏との比較の視点の重要性が高まったと考えられる。そのため、当初の研究計画を若干修正し、イスラーム圏と比較しながらトルコの宗教教育の位置づけを確認した上で、イギリスとの比較を行っていく予定である。こうしたプロセスを経てイスラーム圏であるトルコにおける多元的宗教教育の特徴を明らかにし、また、イギリスとの比較を通じて多元的宗教教育の意義とその限界を明らかにする。そして、これまでの研究結果を論文としてまとめ発表する。
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