研究課題/領域番号 |
24730718
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
金 ヒョン辰 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (10591860)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地理教育 / 教材開発 / 持続可能性 / 東アジア |
研究概要 |
本研究の目的は、持続可能な東アジアを構築する市民性を育成するために、地理的探究に基づく学習を用いた教材を開発し、日韓の教育現場における授業実践を通してその有効性を検証することである。研究期間1年目の平成24年度に実施した主な研究内容と、その成果は以下の2点である。 1.地理教育の先進国であるアメリカ、イギリス、オーストラリアの中等地理カリキュラムを分析することで、様々な現代社会の問題を解決するために、生徒自らがその解決策を探す「地理的探究に基づく学習」の理論的枠組みを明らかにした。「地理的探究に基づく学習」を促すカリキュラムの条件として、概念(内容)、学習のプロセス(方法)、問い(状況)という3つの構成要素を挙げることができる。 2.東アジアの人々がいかに問題の理解を共有し、解決のためにどのような相互協力が必要であるかを考えるための教材を作成するために、韓国・香港の中学校地理教科書の分析を行った。両地域の中学校地理教科書の共通点としては、従来の地誌学習ではなくテーマ学習を中心としている点、生徒自ら情報を収集、分析、解釈する探究活動を強調している点、持続可能な開発の概念を取り入れている点を挙げることができる。 以上、様々な現代社会の問題を解決するために、生徒自らが地理的な観点からその解決策を探すことが重視する方向に向かっている地理教育における世界的な動向は、日本の地理教育へ示唆する点が多いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、中学校社会地理的分野のカリキュラムおよび教材の開発を済ませ、現場での実践を向けて修正・検討を行っている段階である。以下は、平成24年度の大きな成果である。 1. カリキュラムの理論的枠組みである「地理的探究に基づく学習」の観点から地理教育の先進国であるアメリカ・イギリス・オーストラリアの中等地理カリキュラムの分析を行った結果をまとめた著書を出版したことである。 2. 持続可能な東アジアを構築する市民性の育成を目指す教材を開発するために、韓国中学校地理教科書における環境学習単元、香港中学校地理カリキュラムにおける自然災害に関連単元を分析したことである。その分析結果は、日本地理教育学会大会および日本地理学会環境地理教育グループ集会において発表を行い、地理教育関係者からの批判を検討した上、教材開発の参考とした。 しかし、課題も残った。開発した教材を用いて大学生を対象として授業を行う予定であったができなかったため、平成25年度の早い段階において実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、開発した教材を用いて授業実践を行う。授業実践においては、単に先生が教科書の知識を児童生徒に伝達することではなく、実際に生徒が社会における問題を発見し、その問題解決に向かった行動することを重視する。すべての授業実践内容をビデオで撮影・記録し、生徒には事前事後に感想を書いてもらう。授業実践の分析においては、次の点について生徒の認識変容を明らかにする。(1)東アジアにおける環境問題について理解を共有しているか。(2)問題解決のために各国の相互協力の必要性を認識しているか。(3)東アジアにおける持続可能な発展のために行動しようとしているか。この授業実践の分析結果は、国内外の学会(日本社会科教育学会・韓国国際理解教育学会など)にて発表する。平成25年度が科研の最終年であるために、平成24年度に開発したカリキュラムおよび教材、平成25年度に実施した授業の内容を分析した最終報告書を書く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画としては、平成24年度の繰越額を含んで、以下のように使用する予定である。 【設備備品費】平成24年度に購入する計画であったレーザプリンタを購入する。授業において使用するためのプロジェクターを購入する。【消耗品費】授業実践を記録するためのSDHCカードを購入する。【旅費】韓国での授業実践・研究成果報告のために「外国旅費」、学会での研究成果報告を行うために「国内旅費」が必要になる。【人件費・謝金】平成24年度に模擬授業が実施的できなかったため生じた繰越額を含め、資料整理・授業記録など、授業実施に関連して発生する人件費や謝金を学生および教員に支払う。【その他】最終報告書の印刷費として使用する。
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