研究課題/領域番号 |
24730723
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
郡司 明子 群馬大学, 教育学部, 准教授 (00610651)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | からだ / 気づき / 対話 / アート教育 / 衣食住 / レッジョ・アプローチ / ドキュメンテーション / 身体感性論 |
研究概要 |
1.「からだ・気づき・対話のアート教育」に関する先行研究の調査:身体性や協同性を重視し、市民性を育むアート教育として名高いレッジョ・エミリア市(イタリア)におけるReggioChildren主催・International Study Groupに参加。(2013.4.15-20/基盤研究(B)「アンラーニング・ワークショプの分析過程に関する研究」分担として)その後、同行メンバー(含・本研究協力者)らと定期的に研修内容の省察、検証を行う研究会を実施してきた。その成果は、シンポジウム「レッジョ・エミリア幼児教育から見えたこと、学びの根源はアートにあった」にて報告。さらに、本研究のロールモデルとなるレッジョ・アプローチに関する資料収集及びその理解に基づき、特別支援・幼児教育・小学校の教員を対象とした講演・ワークショップ等の実施、学会発表へと展開してきた。 2.アート教育の題材及び指導法の開発に関する研究:前任校(お茶の水女子大学附属小学校)における学習分野「アート」の設立背景を含め、実践内容を学びのリソースである衣食住の視点から分類・分析、その妥当性を検証した。その成果は「身体性を重視したアート教育ー衣食住に着目してー」にまとめた。(郡司・茂木)また、指導法に関する研究として、お茶小での授業実践をワークショップ型学習という切り口にて検証するにあたり、論文「小学校におけるワークショップ型学習に関する実践研究ーお茶の水女子大学附属小学校の事例」(茂木・郡司)の執筆を通じ、本研究の指導法に関する基軸を確認するに至った。さらに実践研究として「こども×アート×ドキュメンテーション展」(学部4年森田智美との共同研究)を開催。保育現場におけるアート実践に基づくドキュメンテーションを展示することにより、広く市民に子どもとアートの親和性や学びの過程を提示し、対話の機会を設けることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究内容は、「からだ・気づき・対話のアート教育」の先行研究として位置づく資料の検索・収集とその整理や分析を進めることである。研究課題としては次の二点を挙げた。①身体論・学習論による「からだ」の基礎的研究②創造的アート教育における学びのメカニズムに関する検討。これらに関しては、本研究に先行してロールモデルとなるレッジョ・アプローチに関する資料収集や分析を中心に探究してきた。特に、学びの生成過程において、レッジョ・エミリアの幼児教育でも重視している多感覚性(身体性)に基づく活動を契機としたアート教育の視点は示唆に富むものであった。 これらは、イタリアへの渡航にてレッジョ・エミリアにおけるINTERNATIONAL Study Groupへの参加や現地での調査及び資料収集から得られた成果である。レッジョ・アプローチ確立に至る歴史的な背景にも通じる解体ー構築の概念(アート性)、社会構成主義(協同性)に拠る「気づき」と「対話」の重視=ドキュメンテーションの役割、プロジェクト学習における想像ー創造活動の“実際”に、体験的に触れられたことは確実に研究の活性化につながった。 さらに、先行研究に即して、保育現場におけるアート教育実践のドキュメンテーション展(活動の過程を可視化し、提示する展覧会)開催(於・前橋ミニギャラリー千代田)や、生活(衣食住)とアートの親密性を提示する展覧会「ライフ×アートプロジェクト」開催(於・OCHA HOUSE-ユビキタスコンピューティング実験住宅/お茶の水女子大学授業学生らとの共同研究)、学会発表等を通じ、多様な人々との間で様々な角度から本研究テーマ、特に今年度の課題に関する内容ついて、対話や議論を深めることができた。これらのことから、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
1.アート教育(からだ・気づき・対話)の理念形成及び実践事例の収集と分析:本研究では、リチャード・シュスターマン(テンプル大学哲学科教授)が提唱する「身体感性論」Somaestheticsの考え方を理念形成の拠り所としたい。シュスターマンは6月に来日予定のため、都内で開催される講演やワークショップ等への参加を予定している。また、レッジョ・アプローチの調査・分析を継続するとともに、広くワークショップ等の学びの場や学校教育におけるアート教育の実践事例を収集し、新たな活用に向けて分析する。 2.題材及び指導法の開発と試行・評価:実践事例の分析結果や研究代表者によるこれまでの(実践)研究をもとに、子どもの「からだ」に働きかける題材及び指導法を開発し、試行・評価を行う。そのフィールドとして以下の機会を予定している。inSEA(英国・カンタベリ)における「見立てワークショップ」の実施、東日本大震災の被災地である女川町における子どもワークショップ、中之条ビエンナーレでの学校教育現場との連携プロジェクト、アーツ前橋(10月オープンの新たな芸術複合施設)のプレ事業における身体表現を通じた鑑賞教育の提案をはじめ、アート教育に依拠する題材開発や実施・評価の機会を有効活用していきたい。さらに、開発した題材及び指導法を研究協力者等に依頼し、多様な場で試行的に実践し、その有効性を検証する。 3.平成25年度における研究成果の公開:各種講演やワークショップ、展覧会等の実施、学会誌及び学会での口頭発表等で研究成果を公開し、広く社会一般に還元すると共に汎用性を図る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.文献、資料収集:身体論(哲学・美学・芸術学・心理学等)関連文献、学習論関連文献、美術教育関連文献等の購入を予定。広く「からだ・気づき・対話のアート教育」に通じる資料を収集、分析、理解を進めたい。 2.造形材料費等:メディア機器を含む文具等、ワークショップの際に活用する造形材料の購入を予定。 3.国内外における調査研究旅費:都内開催の研究会参加、イギリスで開催されるinSEA2013への参加、美術科教育学会での口頭発表(奈良教育大学)等を予定。 なお、平成24年度の残額は、研究が概ね順調に進展している中で計画的に使用した上での残額である。次年度の研究費の使用計画に合わせて有効に活用したい。
|