本研究は、創造的なアート教育による子どもの学びの質的変換と活性化を目的とし、筆者による小学校「アート」(図画工作科に相当)実践を教科以前の「からだ・気づき・対話」という視点で省察し、その価値の構築を目指すものである。身体論、学習論等から既存の学校文化や教育を再考し、根源的存在としての「からだ」を“命の営み”=「学びの身体技法」(佐藤学)として統合するアート教育の可能性を乳幼児期から学齢期の子どもたちを対象にした実践研究のなかで追求してきた。 特に、大学授業や群馬大学附属小学校でのアート実践、学生の卒業研究と協同した身体性を発揮するワークショップ実践(於:中之条ビエンナーレ等)など、数々の実践研究を行ってきた。なかでも身体性に基づく鑑賞活動(劇化)は、美術作品を媒介とし、身体性+協同性+映像メディアの可能性を探るなかで、からだ・気づき・対話の要素が活性化する題材開発につながった。これらは、美術科教育学会における口頭発表や大学紀要を通じてまとめてきた。さらに、アート教育の理念は「からだ・気づき・対話のアート教育ー小学校の授業実践から、その意義を探る-」『子ども学』第3号、萌文書林(2015)に記した。 社会構成主義(対話)に基づく市民教育としてのアート活動を重視した先行事例として、イタリアのレッジョ・エミリア・アプローチに学び、現地での研修等を含めレッジョ・スタッフとのミーティングを重ね、特にPedagogy of Listening:傾聴の教育哲学への理解を深めてきた。また、レッジョ・エミリアのアート教育におけるドキュメンテーション(学びの可視化)および展覧会等を参考に、生活、人生、学びの経験とアートの関連を探るライフ×アート展(於:お茶の水女子大学)の企画・運営に携わり、ワークショップ開催や作品展示を通じて参加、報告書等をまとめるなかで本研究テーマに通じる成果を得た。
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