研究課題/領域番号 |
24730727
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
大沼 覚子 東京芸術大学, 音楽学部, 助手 (60609923)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 保育 / 音楽活動 / 実践史 |
研究概要 |
平成24年度は本研究課題の目的・計画内容を遂行するための、基礎史料、及び具体的な分析対象となる史料の収集、翻刻・整理を主に行った。収集した史料はいずれも、先行研究では詳細に分析されてこなかったデータを含んでおり、これらを丁寧に翻刻・整理することは、本課題達成の基盤となる作業である。具体的には、愛珠幼稚園における保育日誌(明治20年代~30年代)の翻刻を行い、テキスト・データ化した。また、松本幼稚園における保育日誌(明治20年代~30年代)、及び関連史料を新たに収集した。 また、「第3回音楽教育の研究方法を学ぶ会」(2012年6月30日、共立女子大学)では、「二項対立的な分析視点をいかに越えるか?―昭和初期における「保育者」と「音楽(教育)の専門家」の言説分析を通して―」と題した話題提供を行った。ここでは、①小学校関係者と保育関係者が出席した「低学年幼稚園座談会」(『幼児の教育』31巻5号、昭和6年5月)、及び② 音楽(教育)関係者と保育関係者が出席した「幼稚園の唱歌について」(『幼児の教育』40巻7号(昭和15年7月)という二つの座談会を取り上げ、両座談会の出席者の言説分析の結果を報告した。そして、①対象となる人をどういう文脈の人かを捉える必要がある、② 専門家かどうかではなく役職によって言説のニュアンスが異なってくる、③ 言説をどのように使って研究を組み立てていくか、などの意見が出た。研究方法に関することとしては、① 言説を解釈するためには背景をしっかり見ていく必要があること、② 二項対立的な分析枠組みに囚われずデータを整理していくことの必要性などが指摘された。 その他、関連する複数の学会(日本保育学会、日本音楽教育学会、音楽教育史学会、教育史学会等)に参加し、研究方法、データ分析上の視点に関する示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、上述の通り、①愛珠幼稚園関係史料の翻刻・整理、松本幼稚園関係史料の収集、②関連文献の収集など、基礎データの整備に多くの時間を費やした。そのため、それらのデータについて、目的・計画に基づく視点で分析を進めるという作業に遅れが生じた。しかしながら、収集した史料はいずれも、先行研究では詳細に分析されてこなかったデータを含んでおり、これらを丁寧に翻刻・整理することは、本課題達成に不可欠な作業であったと考える。 また、「第3回音楽教育の研究方法を学ぶ会」における話題提供の内容は、次年度遂行予定の課題を先取りしたものであり、その分、本年度計画の達成に影響を与えたものと考えられる。当該研究会は、具体的な事例に基づきながら、音楽教育史研究の方法を検討する研究会であり、ここでの指摘や議論は今後の研究にとっても示唆に富んだものであった。
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今後の研究の推進方策 |
①具体的な分析に進み、研究を推進していくためには、史料の翻刻・整理等、基本的な基礎データの整備作業の完成が必要となる。自らの作業を急ぎ進めると同時に、次年度直接経費のうち、「物品費」を抑え、「人件費・謝金」を増額するよう、予定を修正したい。増額した分は、史料の翻刻・整理作業に協力してくださる方への謝金とする。 ②学会・研究会での報告を行う。 ③学会・研究会でのコメント等を基に、分析の仕方や作業を整理・統合していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度直接経費(計50万)のうち、当初の計画では、物品費20万、旅費15万、人件費・謝金5万、その他10万という内訳になっていた。 「物品費」に関しては、本年度、約19万を支出して、プリンタの購入、本課題に関連する文献の収集などを行い、研究環境を整えてきた。したがって、次年度は「物品費」を10万に抑え、「人件費・謝金」を15万に増額するよう、予定を修正したい。増額した「人件費・謝金」は、本年度及びすでに収集した史料の翻刻・整理作業に協力してくださる方への謝金とし、研究を推進させていくこととしたい。 「旅費」については、次年度は、弘前大学にて日本音楽教育学会、福岡大学にて教育史学会など、遠方にて本課題に関連する学会が開催される他、追加での史料収集出張などにも備え、15万の予算としたい。 「その他」については、本年度、博物館での史料の収集に際して、カメラ撮影は有料になるという条例改正があったため、当初の予算を超えた支出となった。次年度も大事をとって10万のままに据え置きたい。
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