研究課題/領域番号 |
24730727
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研究機関 | 白梅学園短期大学 |
研究代表者 |
長井 覚子 (大沼 覚子) 白梅学園短期大学, その他部局等, 講師 (60609923)
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キーワード | 音楽教育史 / 戦前期 / 幼稚園 / 音楽活動 |
研究概要 |
平成25年度は本研究課題の目的・計画内容を遂行するため、①基礎史料、及び具体的な分析対象となる史料の収集・整理、②論文の執筆を行った。①について、具体的には、戦前期幼稚園における唱歌実践(特に明治期)、器楽実践に関する先行研究と史料の収集と整理を行った。②については、「大正から昭和初期の倉橋惣三における唱歌・遊戯論」(『白梅学園短期大学・大学紀要』第50号、平成26年3月)と題し、大正から昭和初期における倉橋の唱歌及び遊戯に関する言説を検討し、その特質と歴史的意義を明らかにすると同時に、保育における音楽活動の思想史に位置づけることを試みた。その過程で、戦前期幼稚園における音楽活動の史的展開及び、先行研究の概要、保育実践における音楽活動の目的、小学校における唱歌の目的、現在への示唆についても触れた。 また、日本音楽教育学会第44回大会(平成25年10月12日、弘前大学)では、プロジェクト研究I「音楽教育学における『記録』」パネリストとして、「史料としての保育実践記録を考える」と題した報告を行った。報告は、筆者の研究にもとづいて、日誌や実践記録を研究史料として用いる際の課題を提示することを目的とした。その過程で、研究対象となる幼稚園に残された記録を比較検討し、そこから何を読み取ることができるのかを整理した。 その他、関連する複数の学会(日本保育学会、日本音楽教育学会、音楽教育史学会等)に参加し、研究方法、データ分析上の視点に関する示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、上述の通り、①戦前期幼稚園における唱歌実践、器楽実践に関する先行研究と史料の収集・整理、②大正から昭和初期倉橋惣三の唱歌・遊戯論に関する論文執筆をおこなった。資史料の収集について、特に器楽実践に関するまとまった先行研究が少なく、継続して、収集すると同時に、一次史料から実態を探っていく必要があると感じられた。倉橋の唱歌・遊戯論に関する論文は、戦前期幼稚園における音楽活動の全体像を見据えた視点も含んでおり、平成26年度に本課題のまとめをするにあたって、意義あるものになった。また、日本音楽教育学会第44回大会ロジェクト研究I「音楽教育学における『記録』」において、研究対象となる幼稚園に残された記録を比較検討したことも、個別の事例をまとめていくにあたって有意義な作業となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はこれまでの研究成果を総括する年度となり、より整理された研究計画が必要だと考える。そこで、以下3つの作業課題を設定し、研究を推進していく予定である。 1.各作業課題について、資史料の分析結果を論文や報告にまとめる。 2.論文・報告の執筆過程で、課題達成にとって不足した資史料を収集し直す。 3.戦前期幼稚園における音楽活動実践の全体像を示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は「旅費」、「人件費・謝金」、「その他」について、当初の予算を執行できなかった。旅費については、①日本音楽教育学会(於弘前)及び教育史学会(於福岡)の日程が重なり、一方にしか参加できなかったこと、②遠方での史料調査を実施しなかったことで、当初予算よりも少ない額しか使用しなかった。②の結果、「その他」に含めていた資史料印刷費も小額となった。「人件費・謝金」については、史料の翻刻作業の謝金とする予定であったが、諸般の事情から依頼することができなかったため、使用できなかった。 当初の計画における次年度直接経費の内訳は、物品費:20万、旅費:15万、人件費・謝金:5万、その他:10万となっている。ただし、上記理由から繰越金が約20万生じている。平成26年度は、本研究に関連する諸学会が首都圏で行われることが多いため、旅費を10万の予算とし、人件費・謝金予算を15万とする。これをすでに収集した史料の翻刻・整理作業をしてくださる方への謝金とし、研究を推進させる。その他、必要なものを印刷、購入しながら研究の総括をしていきたい。
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