本研究は、対象時期を戦前期に設定し、幼稚園における音楽活動の内容と特質、内容の形成に影響を与えた背景を解明し、その史的展開を理念・教材・教育方法・カリキュラム・実践の側面から総合的に検討することを通して、戦前期日本の幼稚園における音楽活動実践の成果と課題を明らかにすることを目的とした。
平成26年度は、①明治期愛殊幼稚園(大阪)における音楽活動の実態、②小学校音楽(唱歌)教育との関係(東京高等師範学校附属小学校訓導・小林つや江の思想・実践、日本教育音楽協会の活動を中心に)、③唱歌教材作成の変遷と昭和初期の実態(昭和初期については日本教育音楽協会編『エホンシヤウカ』を中心に)、④戦前期保育における器楽活動の展開等について明らかにした。
当該年度研究の成果・意義としては、第一に、これまで明らかにされてこなかった戦前期幼稚園における音楽活動実践に関する歴史的事実の解明・蓄積があげられる。特に、関西地区の幼稚園は、我が国の保育の発展において大きな役割を果たしてきたにもかかわらず、音楽活動の史的展開においてはその歴史的意義が明確ではなく、その解明のためにも、まずはデータの蓄積が不可欠であろう。第二に、唱歌や器楽活動の展開について、通史的に考察し、戦後への成果と課題を明らかにしたことである。第三に、小学校音楽教育関係者が幼児期の音楽活動にどのように関与したのか、その実態を明らかにしようとしたことである。本研究では、主に教材レヴェルでの関与を検討した。これらの成果は、保育者や音楽教育研究者が、乳幼児の音楽活動についての、自らの歴史的な立ち位置を確認し、批判的に省察する際の一助になると考える。
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