研究課題
若手研究(B)
本年度は,理論的考察から枠組みを暫定的に構築すること,及び既有データの分析を通じてその暫定枠組みを洗練することについて取り組んだ。前者に関して,本研究では,数学学習における証明と論駁の活動を捉える枠組みを構築することを目的としている。そのために,ラカトシュの主著『証明と論駁(Proofs and Refutations)』を基盤とし,とりわけラカトシュが定式化している「発見法的規則(Heuristic Rules)」に着目した。そして,その発見法的規則を図式化して整理することを通じて,証明と論駁の活動を捉える枠組みを暫定的に構築した。後者に関しては,既有データとして,小学五年生のペアを対象とした教授実験,中学三年生のペアを対象とした教授実験,及び中学三年生の一斉授業を利用した。それらの分析の結果,上記の枠組みが,証明と論駁の活動を記述する際にある程度有効であることがわかった。一方で,上記の枠組みに当てはまらない子どもの活動も観察されたため,枠組みの洗練の方向性として,枠組みの要素や要素間の移行について柔軟に考える必要性が示唆された。上述の研究活動と並行して,第12回数学教育国際学会(The 12th International Congress on Mathematical Education,平成24年7月,韓国・ソウル)にて研究発表を行い,他の研究者と研究討議を行った。また,第36回日本科学教育学会年会(平成24年8月,東京理科大学),及び第45回日本数学教育学会数学教育論文発表会(平成24年11月,奈良教育大学)に参加し,研究情報の収集を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では,平成24年度の前半に,文献講読を通じて,枠組み構築のための理論的基盤を整備する計画であった。また,同年度後半には,筆者の既有データの分析を通じて,枠組みを暫定的に構築する計画であった。いずれも本年度に達成することができたことから,研究目的の達成度は概ね順調である。
今後は,教師の協力の下,中学生を対象とした予備調査及び本調査を実施する予定である。そして,暫定枠組みを実践的な側面からより洗練していくとともに,洗練した枠組みの有効性を明らかにする。加えて,調査の分析結果を踏まえて,学習指導への示唆を,教材と指導法の観点から導出する。また,これらの研究活動と並行して,国際学会及び国内学会に参加し,研究成果の発表を行う。
当初は,次年度に実施予定の調査を念頭に入れ,調査方法に関する文献を購読する予定であった。しかし,調査方法の整備まで研究が進まなかったため,次年度使用額が発生した。次年度に請求する研究費と合わせて,次年度の前半に,調査方法に関する文献を購読する予定である。
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Proceedings of the 22nd ICMI Study Conference: Task Design in Mathematics Education
巻: - ページ: 印刷中
The International Journal for Technology in Mathematics Education
巻: 19(2) ページ: 73-79
Proceedings of the 12th International Congress on Mathematical Education
巻: - ページ: 2838-2847