本研究では,数学学習における証明と論駁の活動を捉える枠組みを構築することを目的としている。そのために,数理哲学者ラカトシュの主著『証明と論駁』を基盤とし,とりわけラカトシュが定式化している「発見法的規則」に着目している。昨年度まで,発見法的規則に基づいて暫定枠組みを構築した上で,予備調査を通じてその枠組みの洗練に取り組んできた。 本年度は,まず,これまでの検討を整理し,最終的な枠組みを構築した。事柄や証明を論駁する反例に直面した場合について,新たに生成した事柄や証明が,当初の事柄や証明と一般/特殊の関係にあるか,それとも場合分けの関係にあるかを区別した。また,事柄に限っては,新たな事柄を生成する方法が演繹的か非演繹的かも区別した。 次に,構築した枠組みの有効性を明らかにするために,中学校の一斉授業の観察及び分析を行った。具体的には,公立中学校の3年生を対象とした授業3時間,本学の附属中学校の2年生を対象とした授業8時間をそれぞれ観察した。そして,分析の結果,構築した枠組みによって,これらの授業のすべてを記述できることが明らかとなった。また,学習指導への示唆として,図が付された証明問題が,証明と論駁の活動を促進する教材として有効であることが見いだされた。 上述の研究活動と並行して,第2回日本数学教育学会春期研究大会(平成26年6月,東京学芸大学),Joint Meeting of PME 38 and PME-NA 36(平成26年7月,カナダ・バンクーバー),第38回日本科学教育学会年会(平成26年9月,埼玉大学),及び第47回日本数学教育学会秋期研究大会(平成26年11月,熊本大学)等に参加し,研究情報を収集するとともに,本研究の研究成果を発表した。
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