研究課題/領域番号 |
24730734
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
斉藤 百合子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (50423223)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 伝統音楽 / 音楽科 / 授業開発 / 生成の原理 |
研究概要 |
本研究の目的は、「質の認識」を育成する日本伝統音楽の授業モデルを開発し、誰でも実践可能な〈伝統音楽教育のための授業パッケージ〉を制作することである。初年度は日本伝統音楽の生成過程に関する基礎的研究を重点的に行い、授業モデルの開発への示唆を得ることが目的であった。その目的遂行のため、次の二点について研究を進めた。研究成果は以下の通りである。 (1)授業分析に基づいて伝統音楽のリズムの生成過程の分析:附属小学校4年生を対象に行ったお囃子づくりの授業を研究対象とし、言葉・リズム・動きの相互関連に着目して子どもたちのリズムの生成過程を分析した。分析結果より、口唱歌やかけ声などの唱和が身体の動きを引き出すこと、身体の動きによって伝統的なリズムのもつ特質が強調されること、の二点が明らかとなった。 (2)伝統音楽に関する公開ワークショップの開催:平成24年11月23日に、伝統芸能を学び、それらをもとにした舞台を構成している歌舞劇団「田楽座」を講師に招き、「日本伝統音楽の魅力を探る-教材化の視点から-」というワークショップを開催した。小・中学校教員、特別支援学校教員、大学教員など約40名の参加があり、八木節と中山太鼓の講座の後、「伝統音楽のリズムにみるなまり」「伝統音楽におけるコミュニケーション」「動きと音楽との関係」をテーマに議論がなされた。伝統音楽の場合、音楽の形式的側面、内容的側面、技能的側面、文化的側面といった諸側面の結びつきが強くみられ、学校教育では特にその関連を意識して授業展開を図ることが重要であるという示唆を得た。 以上の研究成果を踏まえ、今後は「身体や声とのかかわり」「音楽の諸側面の関連」を意識して伝統音楽の授業のモデル開発を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業分析および公開ワークショップを通して、伝統音楽の授業モデルの開発に向けた示唆を得ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。 授業分析の理論的基盤として、伝統音楽におけるリズムの特質について理論研究を進めた。そこでは「緊張と弛緩のリズム」「拍の柔軟性」という二点が導きだされ、子どものお囃子づくりの過程においてもこれらの二点については、身体の動きに現れて、その特質を感受して表現する様相がみられた。またワークショップにおける議論では、そうした柔軟なリズムや拍は日本の風土や郷土の祭りの進行と相互作用する中で生成してきたものであることが明らかとなった。 以上より、現在までに伝統音楽の授業を構築していく上での重要な示唆を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度の研究成果を踏まえ、伝統音楽の授業モデルの開発および授業パッケージの制作を遂行する予定である。平成25年度は「授業パッケージ化に向けた教材の開発」「授業モデルの構想および実践検証」「諸外国における伝統音楽教育の実態調査」の三点について研究を進める。 (1)授業パッケージ化に向けた教材の開発:伝統音楽教育を進める上で、現場では適切な音源の確保が困難な状況にある。そこでより子どもたちが伝統音楽の授業に対して興味をもって取り組むことができるよう、授業パッケージに音源を添付することを検討している。そのために田楽座にも協力を得て教材化に向けた音源の作成に取り組む予定である。 (2)授業モデルの構想および実践検証:初年度に導出した「身体と声とのかかわり」「音楽の諸側面の関連」を意識した授業モデルを構想し、附属学校において実践する予定である。研究授業は記録にとり、授業モデルの検証を行う。 (3)諸外国における伝統音楽教育の実態調査:諸外国における伝統音楽教育の実態についての研究も同時に進める。その一環として伝統音楽教育の推進国でもある韓国を取り上げ、韓国においてわらべうた教育の実践検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は「音源等の教材の開発」「授業モデルの構想および検証」「諸外国における伝統音楽教育の調査」の三点を遂行するために研究費を使用する。まず教材開発に関しては、会場の確保、録音機器、演奏者への謝礼に研究費を使用する。授業モデルの構想検証に関しては、授業で使用する和楽器の購入、授業の撮影のための記録機器、映像編集ソフトの購入のために研究費を使用する。諸外国における調査に関しては、主に旅費に使用する。
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